法制審議会「民事執行法部会」の設置に関する会長談話

 


本日、法制審議会第177回会議が開催され、法務大臣の諮問により法制審議会「民事執行法部会」(以下「部会」という。)が設置されることとなった。当連合会は、今般の諮問事項について、以前から法整備を求める意見等を公表してきた。


第一に、2003年の民事執行法改正で創設された財産開示手続(民事執行法第196条以下)は、制度としての実効性が十分ではなく、その利用件数も少数に留まっていたことから、当連合会は、2013年6月21日付け「財産開示制度の改正及び第三者照会制度創設に向けた提言」を公表し、財産開示制度の改正と第三者からの情報取得制度の創設を求めてきた。今般の諮問事項は、当連合会と問題意識を共有するものである。債務名義を取得した債権者が債務者財産に強制執行を申し立てるには対象を特定する必要があるが、個人情報の保護等の理由から、私人である有名義債権者が債務者財産に関する情報を収集するには限界があり、有名義債権者は執行不能となるリスクを負担し探索的な強制執行を申し立てるか、執行申立て自体を諦めざるを得ない状況にある。当連合会は、有名義債権者が広く第三者から情報を取得する制度を実現し、これにより債権執行の実効性が強化され、有名義債権者の納得や司法機関に対する国民の信頼の確保を目指すものである。


第二に、当連合会は、1975年から民事介入暴力対策に取り組んでいるが、この間、 2013年6月21日付け「民事執行手続及び滞納処分手続において暴力団員等が不動産を取得することを禁止する法整備を求める意見書」を公表し、不動産の競売における暴力団員の買受けを防止する民事執行手続等の法整備が民間の不動産譲渡や公有地売却における取組に比べて立ち後れている現状を指摘し、その是正を求めてきた。当連合会は、あらためて法整備の速やかな実現を求めるものである。


第三に、国境を越えた子の連れ去りの場合に子の常居所地国への返還を強制する場面では、2013年に国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(いわゆるハーグ条約実施法)が制定されているが、国内における子の引渡しの強制執行については、現行の民事執行法に明文規定がない。当連合会は、部会での議論状況を注視しつつ、実務の状況を踏まえた実践的な検討を行い、裁判の実効性の確保と子の福祉に十分に配慮した規律の創設に貢献していく所存である。

今後の法制審議会とその部会において、当連合会の意見等も踏まえた充実した議論が重ねられることを期待する。

 
      

 2016年(平成28年)9月12日

日本弁護士連合会
 会長 中本 和洋