生活保護世帯が受給する義援金の収入認定に関する緊急会長声明

 


平成28年熊本地震の被災者が受ける義援金に関し、熊本県は本年5月6日、第一次配分を各被災自治体に振り込み、近日中に被災者へ分配される見込みである。

ところが、生活保護を受給する被災者の中には、義援金を受領した結果、収入認定がなされることにより、生活保護費の減額や停止がされることを懸念し、義援金の受領を躊躇する動きが広がりつつあることが報じられている。

そもそも義援金は、市民等の善意を原資として、被災者の生活基盤の回復等のために支給されるものであり、受給によって最後のセーフティーネットといえる生活保護費が減額ないし停止され、ひいては生活保護を受給している被災者の生活再建が困難となっては、義援金や生活保護制度の趣旨に反することは明らかである。

この点に関し、厚生労働省は、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生事務次官通知)において、「災害等によって損害を受けたことにより臨時的に受ける補償金、保険金又は見舞金のうち当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額」については収入として認定しないことを定めている。

また、東日本大震災の際には、平成23年5月2日付け厚生労働省社会・援護局保護課長通知「東日本大震災による被災者の生活保護の取扱いについて(その3)」(以下「本件課長通知」という。)により、第一次義援金等については使途確認をせずに包括的に一定額を収入計上しないことを認めるとともに、自立更生のための費用には、生活用品・家具、家電等の生活基盤回復に直接充てられる費用だけでなく、生業・教育、住家の補修・建築費用等、相当広範な費用を計上することを認め、その計画の策定に当たっても、被災者の被災状況や意向を十分に配慮し、一律・機械的な取扱いとならないよう留意すること等が示された。

今般、平成28年4月27日付け厚生労働省社会・援護局保護課保護係長事務連絡(以下「本件事務連絡」という。)は、平成28年熊本地震による被災者の生活保護についても、本件課長通知に準じて取り扱うこととした。

しかし、本件事務連絡発出後も冒頭指摘したような報道が見られることからすれば、その周知は不徹底であるといわざるを得ない。東日本大震災の際にも本件課長通知の趣旨に反する取扱いが多々見られたことからすると(平成23年11月9日付け「被災地における義援金等の受領による生活保護費打切り問題の是正を求める会長声明」)、今回も今後同様の事態が生じることが危惧される。

よって、当連合会は、国に対し、本件課長通知及び本件事務連絡の内容を改めて関係自治体等に周知徹底することを求めるとともに、関係自治体に対し、被災者が安心して義援金を受領できるよう、被災者に対し十分に周知することを求める。


 

 2016年(平成28年)5月20日

             日本弁護士連合会
           会長 中本 和洋