平成28年熊本地震に関し義援金差押禁止措置等を求める緊急会長声明


熊本地震の甚大な被害状況に鑑み、当連合会は、国に対し、今国会の会期中に以下の二つの緊急の措置を求める。

第一に、都道府県や市町村から被災者に交付される義援金を差押禁止にする特別措置法(「東日本大震災関連義援金に係る差押禁止等に関する法律」と同様の特別措置法)の制定である。義援金は被災者の被害復旧と生活再建のために集まった善意の金員であり、債権者が債権満足の原資として期待すべきものでもなく、一律に差押禁止財産とすることが相当である。熊本地震では、既に全壊2、618棟など、多数の住家被害が発生し、多くの被災者が住宅ローン等の債務整理を必要としているが、同法により、昨年12月に策定された「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」に基づく住宅ローン等の債務整理(以下「被災ローン減免制度」という。)の利用後も義援金を被災者の手元に残すことができ、被災ローン減免制度の利用促進、ひいては被災者の生活再建の後押しにつながる。

第二に、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律第7条を適用するのに必要な政令を早急に制定し、民事調停法による調停申立てに係る手数料を無償化する措置を採ることである。熊本県弁護士会が行っている無料電話相談には、既に1229件(2016年5月8日現在)の相談が寄せられているところ、その相談内容の多くは、民事調停による解決が期待できる不動産賃貸借(借地・借家)、工作物責任、相隣関係及び境界に関する相談である。民事調停申立て手数料無償化はこれらの紛争解決に向けた有効な措置となる。

また、被災ローン減免制度においては、被災者と金融機関との債務の全部又は一部免除の合意に関して特定債務等の調整の促進のための特定調停手続を利用することとされており、同法に基づく申立費用は民事調停法に従うこととされているため、同申立費用の無償化により被災ローン減免制度の更なる利用促進が期待できる。

併せて、当連合会は、関連する金融機関等に対し、被災ローン減免制度利用促進のため、更なる制度告知を要望するとともに、半年程度の返済猶予とその間の金利を減免することを含め同制度の柔軟かつ実効的な運用に努めていただくよう要望する。


 2016年(平成28年)5月9日

             日本弁護士連合会
           会長 中本 和洋