死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し、死刑制度の廃止についての全社会的議論を求める会長声明

 

 

本日、東京拘置所及び仙台拘置支所において各1名に対して死刑が執行された。岩城光英法務大臣による初めての死刑執行であり、第2次安倍内閣以降、死刑が執行されたのは、2015年6月以来8回目で、合わせて14人になる。東京拘置所における被執行者は、裁判員裁判による死刑判決を受け、裁判員裁判による死刑囚として初めて執行されたものである。本件は、弁護人が控訴したものの、自ら控訴を取り下げたことにより死刑が確定した事案であり、国連条約機関等から繰り返し求められている必要的上訴の要請を充たしていない。また、仙台拘置支所における被執行者は、第一審で認めた後、控訴審で否認に転じ無実を主張していたものである。

 

当連合会は、2015年12月9日、岩城法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出して、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、死刑制度に関する世界の情勢について調査の上、調査結果と議論に基づき、今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと、そのような議論が尽くされるまでの間、すべての死刑の執行を停止すること等を求めていた。

 

このような状況における死刑の執行は極めて遺憾であり、当連合会は改めて死刑執行に強く抗議する。

 

2014年3月、静岡地方裁判所が袴田巖氏の第二次再審請求事件について、再審を開始し、死刑及び拘置の執行を停止する決定をした。現在、東京高等裁判所において即時抗告審が行われているが、もし死刑の執行がなされていたならば、まさに取り返しのつかない事態となっていた。袴田氏は48年ぶりに釈放されたが、その心身に不調を来しており、袴田事件は、えん罪の恐ろしさはもちろんのこと、死刑制度の問題点を浮き彫りにしている。

 

死刑の廃止は国際的な趨勢であり、世界で死刑を廃止又は停止している国は140か国に上っている。死刑を存置している国は58か国であるが、2014年に実際に死刑を執行した国は更に少なく、日本を含め22か国であった。いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国(34か国)の中で死刑制度を存置している国は、日本・韓国・米国の3か国のみであるが、韓国は17年以上にわたって死刑の執行を停止、米国の19州は死刑を廃止しており、死刑を国家として統一して執行しているのは日本のみである。こうした状況を受け、国際人権(自由権)規約委員会は、2014年、日本政府に対し、死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。

 

2014年11月に実施された死刑制度に関する政府の世論調査の結果、「死刑もやむを得ない」との回答が80.3%であったものの、そのうち40.5%は「将来的には、死刑を廃止してもよい」とした。また仮釈放のない終身刑が導入されるならば、「死刑を廃止する方がよい」37.7%、「死刑を廃止しない方がよい」51.5%と回答している。この結果からも死刑廃止について議論する必要性があると言える。

 

当連合会は、これまでの死刑執行に対しても強く抗議してきたところであるが、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、改めて死刑執行を停止し、死刑に関する情報を広く国民に公開し、死刑制度の廃止についての全社会的議論を求めるものである。

 

 

 

2015年(平成27年)12月18日

日本弁護士連合会

会長 村 越   進