建築生産システムの見直しを改めて求める会長声明 

本年10月、横浜市の分譲マンションが傾斜した事件で、二次下請けの業者が施工した基礎杭が支持層(強固な地盤)に届いていなかったこと及び基礎杭の施工記録のデータが改ざんされていたことが発覚した。


これは、当連合会が従前から繰り返し見直しを求めてきた、我が国の建築生産システムの問題点が顕在化したものである。


すなわち、我が国の建築生産システムには、建設業界の重畳的下請構造や建設業者のモラル低下といった問題点に加え、建築士法が予定する建築士による工事監理が適正に機能しないことや、行政が現場で施工者の工事を適正に監視する制度も不十分であること等の問題点が存在する。


そこで、当連合会は、1997年10月及び1998年3月に、「住宅検査官」(仮称)による検査制度の導入を求める意見書を公表し、2005年11月に開催された第48回人権擁護大会では、「安全な住宅に居住する権利」を実現するための決議を採択した。さらに、2006年2月には、「安全な住宅を確保するための提言―構造計算偽装問題を契機として―」を公表し、建築確認検査制度の抜本改革を求めるとともに、建築士の中から「住宅検査官」(仮称)を任命し、特に一定規模以上の建築物についてはより厳格なチェックを義務付けること、また、建設業者等が建築物の構造上の安全性等に関わる重要な規定に違反した場合の罰則を強化すること等を求めてきたが、上記の問題点は改善されないまま今日に至っている。


この度発覚した事件も、建築士による工事監理が適正に機能し、また、行政が現場で施工者の工事を適正に監視する制度が十分に整備されていれば防げたものであり、当連合会が繰り返し警鐘を鳴らしてきた上記の問題点が再び現実化したものにほかならず、極めて遺憾である。


当連合会は、「安全な住宅に居住する権利」が国民の基本的人権の一つであることに鑑み、住宅取得者が欠陥住宅被害に遭わないよう、国、自治体及び関係機関に対し、現行の建築士による工事監理制度が適正に機能しなかった原因を究明するとともに、これらの制度が適正に運用される仕組みを構築すること、そのために、現行の建築生産システムを抜本的に見直し、「住宅検査官」(仮称)による検査制度を導入し、行政が現場で施工者の工事を必要に応じてチェックする体制を一日も早く構築することを求めるものである。

 

2015年(平成27年)11月13日

日本弁護士連合会

会長 村 越   進