最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明

 

中央最低賃金審議会は、近々、厚生労働大臣に対し、本年度地域別最低賃金額改定の目安についての答申を行う予定である。厚生労働省は、昨年度の改定において、全国加重平均16円の引上げ(全国加重平均780円)をもって平成20年の改正最低賃金法施行後、初めて全ての都道府県において、最低賃金で働いた場合の手取り収入額と生活保護費(生活扶助+期末一時金+住宅扶助実績)とのいわゆる逆転現象が解消される見込みとなったと公表した。しかし、日本の最低賃金は依然として先進諸外国と比較しても低い水準であり、大幅な引上げの必要性は高い。


まず、逆転現象の解消については、生活保護基準引下げの影響があることを見逃してはならない。生活保護基準はナショナル・ミニマム(国家的最低保障)が現実化したものであるところ、憲法25条2項が国に社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上増進義務を課していることからすれば、その引下げが、最低賃金の引上げに負の影響を及ぼすことがあってはならないというべきである。


次に、最低賃金の地域間格差が依然として大きいことも問題である。昨年度の最低賃金時間額の分布は677円(鳥取県、高知県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、沖縄県)から888円(東京都)と実に211円もの格差が生じている。地域経済の活性化のためにも、地域間格差の縮小は喫緊の課題である。


また、最低賃金の引上げは、同制度の主な対象者である非正規労働者の賃金面における待遇改善及び生活と健康の確保の点からも重要である。最低賃金の引上げにおいては、本来、1日8時間、週40時間の労働で、経済的な心配なく暮らしていけるだけの賃金を確保できるようにすることを目指すべきであるが、全国加重平均の時給780円で1日8時間、月22日間働いた場合、月収は13万7280円に過ぎず、この水準では労働者個人の生活は安定しない。


当連合会は、2011年6月16日付け「最低賃金制度の運用に関する意見書」、2014年7月24日付け「最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明」等を公表し、繰り返し、最低賃金額の大幅な引上げを求めてきたところである。


他方、政府は、2010年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」において、2020年までに「全国最低800円、全国平均1000円」にするという目標を明記し、本年6月30日に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2015」等においても、中小企業・小規模事業者への支援を図りつつ最低賃金引上げに努めるべきことを明記している。この目標を今後5年間で達成するためには、1年当たり44円以上の引上げが必要であるから、中央最低賃金審議会は、本年度、全国全ての地域において、少なくとも44円以上の最低賃金の引上げを答申すべきである。


上記答申がなされた後に各地の実情に応じた審議が予定されている各地の地方最低賃金審議会においても、以上のような状況を踏まえ、最低賃金額の大幅な引上げを答申すべきである。

  

2015年(平成27年)7月3日

日本弁護士連合会

会長 村 越   進