取調べの可視化の義務付け等を含む「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」の早期成立を求める会長声明

被疑者取調べの全過程の録音・録画の義務付けをはじめとする刑事訴訟法等の一部を改正する法律案は、2015年5月19日、衆議院で審議入りした。


有識者委員が参加した法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」で約3年間の議論を経て全会一致で取りまとめられた答申に基づく本法律案は、被疑者取調べの録画の対象範囲が裁判員裁判対象事件及び検察独自捜査事件に限定されているものの、対象事件については全過程の録画を義務付けるものである。さらに、本法律案には、被疑者国選弁護制度の勾留段階全件への拡大、証拠リストの交付等の証拠開示の拡大、裁量保釈の判断に当たっての考慮事情の明確化、犯罪被害者等及び証人の保護措置の創設等の改正が含まれている。


また、本法律案には、通信傍受の拡大、捜査・公判協力型協議・合意制度のいわゆる司法取引制度の導入など、証拠収集手段の多様化も盛り込まれた。当連合会は、通信傍受制度の安易な拡大に反対してきたところであるが、補充性・組織性の要件が厳格に解釈運用されているかどうかを厳しく注視し、人権侵害や制度の濫用がないように対処していく。いわゆる司法取引についても、引き込みの危険等に留意しつつ、新たな制度が誤判原因とならないように慎重に対応する。


本法律案については、多くの制度がひとつの法案に盛り込まれていることに批判もあるが、答申にも述べられているとおり、複数の制度が一体となって新たな刑事司法制度として作り上げられているものである。


当連合会は、長年にわたり、刑事司法改革を訴え、全件全過程の被疑者取調べの可視化に取り組んできたが、この刑事訴訟法改正により、複数の重要な制度改正とともに供述調書に過度に依存せず、取調べの適正な実施に資する制度が本格的に導入されることで、全体として刑事司法改革が確実に一歩前進するものと評価している。本法律案が、充実した審議の上、国会の総意で早期に成立することを強く希望する。


えん罪を生まない刑事司法制度の確立は当連合会の真に求めるものである。その実現には、理念に則った弁護実践とともに、制度の適切な運用と不断の見直しが不可欠となる。当連合会は、市民・関係者、全ての弁護士、弁護士会とともに、改革をさらに前進させるために全力を尽くす決意である。

 

 

  2015年(平成27年)5月22日

日本弁護士連合会      

 会長 村 越   進