「矯正医官の兼業及び勤務時間の特例等に関する法律案」に関する会長声明

 

本年3月24日、政府は、矯正医官の兼業及び勤務時間の特例等に関する法律案(以下「矯正医官特例法」という。)を閣議決定し、同日第189回国会(常会)に提出した。

 

矯正医官特例法は、兼業の許可や勤務時間についての国家公務員法の特例を設け、矯正医官の確保を図るものとされている。

 

法務省によると、全国の293か所の矯正施設では、矯正医官の定員が327人であるところ、現員は252人と2割以上の欠員が出ており、常勤医不在の施設も31か所に上る(2015年1月1日現在)。

 

法務省が設置した「矯正医療の在り方に関する有識者検討会」は、2014年1月21日に法務大臣に提出した「矯正施設の医療の在り方に関する報告書~国民に理解され、地域社会と共生可能な矯正医療を目指して~」において、矯正医官の不足を指摘し、「矯正施設における医療は、まさに『崩壊・存亡の危機』にある。」との認識を示した。

 

今国会に提出された矯正医官特例法は、その象徴である医師不足解消のための立法措置であり、当連合会は同法案に賛同する。

 

しかしながら、刑事施設における医師不足は、「兼業、勤務時間の特例」を設けるのみでは解決しない。

 

また、現在の刑事施設医療には、医師不足のみにとどまらず、刑事施設医療が刑事施設に抱え込まれる閉鎖的なものとなっていること、刑事施設医療が処遇のためのものと位置付けられていること等、深刻な問題が存在する。

 

これらの問題を解決するには、被収容者の患者としての権利の保障、外部医療機関との連携強化と大胆な外部委託、刑事施設医療の処遇からの独立性の確保、刑事施設医療の厚生労働省への移管といった抜本的改革が必要である。とりわけ、「刑事施設医療の厚生労働省への移管」は、諸外国では既に実施されている例が複数あり、当連合会が2014年4月に行ったフランス調査でも顕著な改善効果が認められている。将来の検討課題として先送りするのではなく、我が国においても現実的検討課題とすべき時期に来ている。

 

当連合会は、法務省、政府が矯正医官特例法の成立と施行にとどまることなく、引き続き、刑事施設医療の抜本的改革のための努力を続けることを求めるものである。

 

また、2013年8月22日付け「刑事施設医療の抜本的改革のための提言」を公表するなど、長年にわたり刑事施設医療の抜本的改革を提言し、その実現を求めてきた立場から、引き続き関係諸機関との連携を強め、刑事施設医療の抜本的改革のために必要な取組を続けることを表明する。

     

  2015年(平成27年)4月9日

日本弁護士連合会      

 会長 村 越   進