民法の一部を改正する法律案及び同整備法案の今国会での成立を求める会長声明

本年3月31日、民法の一部を改正する法律案(閣法63号)及び同法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(閣法64号)(以下両法案を一括して「本改正法案」という。)が閣議決定され、同日第189回国会(常会)に提出された。

 

当連合会は、民法が、市民の日常生活や経済活動を規律する基本法であることから、その改正の重要性に鑑み、法制審議会民法(債権関係)部会における審議に際して、これまでも適宜、意見を公表してきた。

 

特に、昨年11月には民法(債権関係)改正法案に約款に関する法規範を規定することを求める会長声明を公表しているところ、法制審議会において本年2月24日に取りまとめられた「民法(債権関係)の改正に関する要綱」(以下「要綱」という。)には、約款に関する法規範を規定することが盛り込まれ、本改正法案にも反映されていることは評価できる。

 

2009年11月以来99回にわたる審議を続けてこられた法制審議会民法(債権関係)部会の委員・幹事をはじめとした関係者各位、そして2回のパブリックコメントをはじめとして、意見を提出された多数の団体及び市民の尽力に対し、改めて敬意を表する。

 

当連合会は、本年3月19日、要綱に対する意見を取りまとめて、要綱およびこれに基づく改正法案について、「保証人保護の拡充や約款ルールの新設を見ても明らかなように、利害の対立する複数の契約当事者間の適正な利益調整を図り、かつ、健全な取引社会を実現するために、必要かつ合理的な改正提案であると評価でき、当連合会は本改正法案に賛成する。」との意見表明を行った。

 

同時に、当連合会は、「本改正法案には、なお不十分な点もあるので、国会において、これを踏まえた十分な審議が行われることを要望する。」として、個人保証、約款ルール、消滅時効、相手方惹起型の動機の錯誤の4点について、十分な審議を行うことを要請している。とりわけ、個人保証規制の例外を認めることになる「主たる債務者が行う事業に現に従事している配偶者」については「経営者保証の適格性を明文で認めることは相当でないので、その修正や今後の改正を期する方向での附帯決議がなされるべきである。」としている。また、「本改正法案に採り上げることができなかった論点については、今後、実務においてそれらの論点を支える法理の具体化・精緻化を図るとともに、遅滞なく順次改正すべきであると考える。」として実務の経験を踏まえた改正検討の継続を求めている。

 

法制審議会民法(債権関係)部会における5年以上に及ぶ検討内容は、多岐にわたり膨大である。時を移さず、これらの検討内容を活かして、今国会で充実した十分な審議を行い、重要法案である本改正法案の成立を求めるものである。

      

  2015年(平成27年)4月3日

日本弁護士連合会      

 会長 村 越   進