取調べの可視化の義務付け等を含む「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」に対する会長声明

政府は、2015年3月13日、被疑者取調べの全過程の録音・録画の義務付け、被疑者国選弁護制度の勾留段階全件への拡大、証拠リストの交付をはじめとする証拠開示の拡大、身体拘束に関して裁量保釈の判断に当たっての考慮事情の明確化、犯罪被害者等及び証人の保護措置の創設等を含む刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を国会に提出した。

 

「検察の在り方検討会議」後、えん罪を生まない新たな刑事司法制度の構築に向けて法務大臣の諮問を受けて設置され、有識者委員も参加した法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」における約3年間にわたる討議を経たものである。

 

当連合会は、改革が一歩前進したことを評価し、改正法案が速やかに成立することを強く希望する。

 

被疑者取調べの録音・録画制度は、対象範囲が裁判員裁判対象事件及び検察独自捜査事件に限定されているが、検察庁における運用も拡大しており、当連合会は、裁判所における厳正な運用と、弁護人による適切な弁護実践の積み重ねによって、3年後に予定されている見直しにおいて全事件の可視化が実現することを求めていく。

 

通信傍受については、通信傍受が通信の秘密を侵害し、ひいては個人のプライバシーを侵害する捜査手法であることから、人権侵害や制度の濫用について危惧の念を禁じ得ない。当連合会としては、補充性・組織性の要件が厳格に解釈運用されているかどうかを厳しく注視し、必要に応じ、第三者機関設置などの制度提案も検討する。

 

捜査・公判協力型協議・合意制度については、引き込みの危険などが指摘されていることから、関係者供述の信用性判断に当たっては格段の配慮がなされるべきである。当連合会も、新たな制度が誤判の原因となることがないように慎重に対応する。

 

証拠開示の更なる拡充、再審請求審における証拠開示制度の整備、勾留及び保釈制度の改善、取調べ前に弁護士の助言を受ける機会の保障等の諸課題については、引き続きその実現を目指して取り組んでいく。

 

えん罪を生まない刑事司法制度の確立には、全ての弁護士が新たな制度のもとで、その理念に則った弁護実践を行うことが不可欠である。当連合会は、市民・関係者、全ての弁護士、弁護士会とともに、改革をさらに前進させるために全力を尽くす決意である。

 

 

 

2015年(平成27年)3月18日

        日本弁護士連合会

       会長 村 越   進