福井女子中学生殺人事件再審請求最高裁決定に関する会長声明

 

 

最高裁判所第二小法廷(千葉勝美裁判長)は、2014年12月10日付けで、いわゆる「福井女子中学生殺人事件」に関する再審請求事件(請求人前川彰司氏)の特別抗告審につき、抗告を棄却する旨決定した(以下「本決定」という。)。

 

本件において、前川氏は一貫して無実を主張し、前川氏と犯行を結び付ける客観的証拠は皆無であった。わずかに、「犯行後に血を付けた前川氏を見た。」などとする暴力団員とその関係者の供述があったものの、これらの供述は著しい変遷を繰り返すなど、捜査機関の不当な誘導によるものであったことが歴然としていた。

 

本件の第一審である福井地方裁判所は、1990年(平成2年)9月26日、関係者供述について信用性を否定し、殺人事件につき、無罪判決を言い渡した。

 

ところが、名古屋高等裁判所金沢支部は、さしたる有力な証拠がないにもかかわらず、1995年(平成7年)2月9日、逆転有罪判決(懲役7年)を言い渡し、最高裁判所も、1997年(平成9年)11月12日、上告を棄却し、有罪判決が確定した。

 

これに対し、前川氏は、2004年(平成16年)7月、当連合会の支援の下に、名古屋高等裁判所金沢支部に再審請求を申し立てた。

 

請求審である名古屋高等裁判所金沢支部は2011年(平成23年)11月30日の決定において、凶器と認定された2本の包丁では形成不可能な創傷が存在すること、犯行に使用したとされる自動車内から本来あるはずの血痕が発見されていないこと、さらに、自殺偽装が行われる等現場状況からうかがわれる犯人像が前川氏と著しくかけ離れたものであることなどを認めた。その上で、これらの事実は確定判決が有罪認定の根拠とした関係者の各供述の信用性に疑問を抱かせるに十分とし、前川氏を犯人とするには合理的疑いが生じたとして、再審開始を決定した。

 

ところが、異議審である名古屋高等裁判所は、弁護団の提出した新証拠については、いずれも旧証拠の証明力を何ら減殺するものではないとして、上記再審開始決定が指摘した疑問点を無視し、同決定を取り消したため、前川氏は、最高裁判所に特別抗告をしていた。

 

本決定は、異議審決定には判例違反その他の特別抗告理由がないとして、異議審決定を是認した。

 

再審請求に関する最高裁判所の白鳥決定及び財田川決定が判示するように、新証拠の明白性判断は、旧証拠構造の全面的な再評価を踏まえた上で、新旧全証拠を総合評価して判断すべきであり、「疑わしいときは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則は再審にも適用される。再審開始決定をした名古屋高等裁判所金沢支部は、旧証拠である関係者の供述が極めて脆弱なものであること、請求審で新たに実施した法医学者の証人尋問の結果も踏まえて、新旧全証拠を総合的に評価して新証拠の明白性を認めたが、本決定は、関係者の関与供述の変遷経過を十分に考慮するなど新旧全証拠を総合的に評価せず、何ら合理的な根拠を示すことなく請求審の決定を覆した異議審の決定について、何ら具体的に判示することなく抗告を棄却しており、到底認めがたい。

 

当連合会は、今後とも請求人の再審開始を目指し、引き続き全力を尽くしていく所存である。


 

 

   2014年(平成26年)12月12日

  日本弁護士連合会
  会長 村 越  進