警察庁「マネー・ローンダリング対策等に関する懇談会」報告書に関する会長声明

 

警察庁の「マネー・ローンダリング対策等に関する懇談会」は、2014年7月17日、我が国が対応すべきマネー・ローンダリング対策について報告書(以下「本報告書」という。)をとりまとめた。


本報告書においては、顧客管理に関する金融活動作業部会(Financial Action Task Force,以下「FATF」という。)の指摘を踏まえて、顧客管理措置の強化、取引時確認等に我が国がさらに対応すべきこととされており、これを受けて、秋の臨時国会に犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下「犯収法」という。)の改正案が上程されるとの報道がある。


犯収法は弁護士等による本人特定事項の確認等に相当する措置については、他の士業者の例に準じて当連合会の会則で定めるところによるとしており(同法第11条)、本報告書に基づいて他の士業者に適用される法令が改正された場合、当連合会は、これに準じて会規の改正の要否を検討することとなる。


当連合会では、警察庁の前回懇談会が2010年にとりまとめた報告書に対して、同年9月「警察庁『マネー・ローンダリング対策のための事業者による顧客管理の在り方に関する懇談会』報告書に関する意見書」において、第1に、事業者による顧客管理措置を立法によって強化する際には、その前提となる立法事実の有無について慎重な検討をすべきであること、第2に、弁護士による顧客管理措置のあり方については、弁護士の自治が最大限認められるべきであるとの意見を述べているところである。また、当連合会は、会員に対して情報提供、研修をはじめ、弁護士がマネー・ローンダリングに利用されないための対策を実施している。 


本報告書は、顧客管理措置のさらなる強化を提案しているが、2010年意見書と同様以下のとおり指摘する。


まず、立法による顧客管理措置の強化には、立法事実の調査が必要である。外国で採用された手法が我が国で有効とは限らないことから、我が国で個々の施策がマネー・ローンダリング対策として効果があることを検証するため、我が国のマネー・ローンダリングのリスク状況を分析することが求められる。


そして、金融取引に関与する形態は事業者の種類によって異なり、マネー・ローンダリングのリスクも事業者によって差があることから、規制にあたっては、事業者の特性を問わず横断的に一律に規制するのではなく、事業者のリスクに応じた対応が効果的になされるべきである。特に弁護士によるこのような観点での顧客管理措置については、弁護士自治を尊重すべく設けられた犯収法第11条の趣旨をふまえ、当連合会の会規による対応に委ねるべきである。


当連合会は、その対応に際して、FATFが公表している法律専門家向けリスク・ベース・アプローチガイダンスや法律専門家がマネー・ローンダリングに巻き込まれる危険指標を明らかにした2013年6月「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与に対する法律専門家の脆弱性について」と題する報告書を判断基準としながら、法律専門家の業務や依頼者の性質に沿ったリスク管理を推進していく所存である。


 

 

   2014年(平成26年)8月29日

  日本弁護士連合会
  会長 村 越  進