死刑執行に強く抗議し、改めて死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明

 

本日、東京拘置所及び仙台拘置支所において、各1名に対して死刑が執行された。谷垣禎一法務大臣による6度目の執行であり、同大臣は就任以来、合計11名に対して死刑の執行を命じたことになる。仙台拘置支所において執行された被執行者は、今月、第3次再審請求が棄却され、近日中に第4次再審請求を行うべく準備を進めていたとのことである。極めて遺憾であり、当連合会は改めて死刑執行に強く抗議する。

 

当連合会は、2013年2月12日、谷垣法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出して、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、死刑制度に関する世界の情勢について調査の上、調査結果と議論に基づき、今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと、そのような議論が尽くされるまでの間、すべての死刑の執行を停止すること等を求めていた。

 

本年3月27日には、静岡地方裁判所が袴田巖氏の第二次再審請求事件について、再審を開始し、死刑及び拘置の執行を停止する決定をした。袴田氏は48年ぶりに釈放されたが、極めて長期間死刑の恐怖の下で身体を拘束された結果、その心身に不調を来している。また、もし死刑の執行がなされていたならば、まさに取り返しのつかない事態となっていた。この袴田事件の再審開始決定により、えん罪の恐ろしさはもちろんのこと、死刑制度の問題点がいっそう明らかになっていたのである。

 

死刑の廃止は国際的な趨勢であり、世界で死刑を廃止又は停止している国は140か国に上っている。死刑を存置している国は58か国であるが、2013年に実際に死刑を執行した国は、日本を含め22か国であった。いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国(34か国)の中で死刑制度を存置している国は、日本・韓国・米国の3か国のみであるが、韓国は16年以上にわたって死刑の執行を停止、米国の18州は死刑を廃止しており、死刑を国家として統一して執行しているのは日本のみである。こうした状況を受け、国際人権(自由権)規約委員会は、本年7月24日、日本政府に対し、死刑の廃止について十分に考慮することや、執行の事前告知、死刑確定者への処遇等をはじめとする制度の改善等を勧告している。

 

当連合会は、これまでの死刑執行に対しても強く抗議してきたところであるが、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、改めて死刑執行を停止し、死刑に関する情報を広く国民に公開し、死刑制度の廃止について全社会的議論を直ちに開始することを求めるものである。

 

 

   2014年(平成26年)8月29日

  日本弁護士連合会
  会長 村 越  進