「技能実習制度の見直しの方向性に関する検討結果(報告)」に対する会長声明

 

法務大臣の私的懇談会である出入国管理政策懇談会の外国人受入れ制度検討分科会は、本年6月10日、「技能実習制度の見直しの方向性に関する検討結果(報告)」(以下「報告」という。)を、法務大臣に報告した。

 

報告は、技能実習制度の存続を前提として、「問題点を徹底的に改善した上で、制度の活用を図るべき」との「基本的な考え方」の下、制度の拡充の方向性として、現在3年が上限となっている実習期間を2年程度延長し、又は2年程度の再技能実習を認める、受入れ人数の上限を引き上げる、自動車整備業、林業、惣菜製造業、介護等のサービス業、店舗運営管理等への対象職種の拡大を挙げることを提言した。

 

また、同月16日、政府の日本経済再生本部・産業競争力会議では、『「日本再興戦略」の改訂について(素案)』(以下「素案」という。)が配布された。素案では、外国人材の活用の一方策として、外国人技能実習制度を抜本的に見直すこととし、対象職種の拡大、実習期間の延長、受入れ枠の拡大を挙げている。

 

他方、報告は、送出し機関による保証金の徴収、賃金不払い、待遇改善を求める実習生を強制的に帰国させる等の人権侵害が後を絶たない現状を当連合会等が指摘していることも受けて、制度の適正化に関する見直しの方向性として、相談制度の充実、不適正な受入れのあった実習実施機関から他の機関へ転籍できる柔軟な仕組みの構築、二国間協定等による送出し機関の規制の実効化、日本人と同等程度の報酬水準の徹底等を挙げ、素案は、管理監督体制を抜本的に強化するための方策を挙げている。

 

技能実習制度は、技能実習生による日本の技術の海外移転という国際貢献のための制度であるとされながら、その実態は安価な非熟練労働力供給のための制度として利用される名目と実態の乖離があり、名目上の目的ゆえに労働者として当然に認められるべき職場移転の自由も認められず、対等な労使関係の構築が困難となっている。このような構造的な問題があるがゆえに人権侵害の事例が後を絶たない。

 

報告の適正化に関する見直しの提案は、制度の問題点を踏まえた真摯な対応を含んでいるものと評価することができるが、技能の移転という名目と実態の乖離という制度の基本的な問題点を残していること、実習実施機関の変更を「不適正な」受入れのあった場合にのみ可能として限定しており、その「不適正な」場合を誰がどのように認定するかも明確ではないことなどから、なお上記の構造的な問題を解消するには至っていない。

 

当連合会は、かねて技能実習制度の廃止を求めてきたものであるが、報告の適正化に関する見直しの方向性をより徹底して技能実習制度の廃止に結びつけること、報告が提案するような非熟練労働者の受入れを拡大するのであれば、そのこと自体を制度目的とし、対等な労使関係の形成の可能な新たな制度を設けることなどを更に徹底して検討することを求めるものである。



 


 2014年(平成26年)6月18日

  日本弁護士連合会
  会長 村 越  進