改めて憲法改正手続法の見直しを求める会長声明

2014年6月13日、日本国憲法の改正手続に関する法律(以下「憲法改正手続法」という。)の一部を改正する法律が成立した。

 

2007年に成立した憲法改正手続法は、附則において、①選挙権年齢等の18歳への引下げに関する法制上の措置(附則第3条)、②公務員の政治的行為の制限に関する検討(附則第11条)、③憲法改正問題についての国民投票制度に関する検討(附則第12条)が課題とされた。さらに、参議院特別委員会の18項目にわたる附帯決議が付されており、その中でも、改正項目の関連性判断の在り方、最低投票率制度の検討、国民投票広報協議会の運営の在り方、公務員等の地位利用による国民投票運動の規制の再検討、有料広告規制の公平性確保等、基本的な多くの問題点について、検討の必要性が指摘されていた。

 

今回の改正法は、附則に定められた三点に関し、①について選挙権年齢・成年年齢問題を先送りにして改正法施行4年後から国民投票年齢を18歳以上とし、②について公務員の国民投票運動及び意見表明を認めつつ、裁判官や検察官、警察官の国民投票運動を禁止し、さらに、国民投票運動に関し組織により行われる勧誘運動、署名運動及び示威運動の公務員による企画、主宰及び指導並びにこれらに類する行為に対する規制の在り方を今後の検討条項とし、③は再び先送りにする、というものである。これは、憲法改正手続法が①②について2010年5月までと定めた検討期間を既に大幅に過ぎているにもかかわらず、多くの課題を更に先送りし、憲法改正手続の準備を急ごうとするものである。

 

当連合会は、2009年11月18日付けの「憲法改正手続法の見直しを求める意見書」において、次のように問題点を指摘し、その見直しを求めてきた。

 

1 投票方式については、原則として各項ごとの個別投票方式とするべきである。

 

2 公務員・教育者に対する地位を利用した国民投票運動の禁止は、萎縮効果が重大であり削除されるべきである。

 

3 組織的多数人買収・利害誘導罪は、極めて不明確な要件の下に、広汎な規制を招きかねず、罪刑法定主義に抵触し、自由な表現活動を萎縮させる危険性が高いので、削除されるべきである。

 

4 国民に対する情報提供については、国民投票広報協議会の構成等の在り方を見直し、公費によるテレビ・ラジオ・新聞の利用について公平性・中立性の確保等を更に検討し、有料意見広告放送の公平性の確保や禁止期間の表現の自由に対する脅威等について十分に検討されるべきである。

 

5 発議後国民投票までの期間は、最低でも1年間に延長すべきである。

 

6 最低投票率の規定は必要不可欠であり、その規定を設けるべきである。また、無効票を含めた総投票数を基礎として、過半数を算定すべきである。

 

7 国民投票無効訴訟について、「30日以内」という出訴期間は短期に過ぎ、管轄裁判所は少なくとも全国の各高等裁判所とすべきである。

 

基本的人権を保障し統治機構の基本を定める憲法の改正手続においては、十分な情報をもとに、国民の間で自由闊達な意見交換をした上、主権者である国民一人ひとりが改憲案について自らの考えに基づき、意思表示をしうる事が不可欠である。

 

ところが、今回の憲法改正手続法改正案の国会審議においては、これらの重要な論点は審議の対象にされないままとなった。

 

よって当連合会は、憲法改正手続法の今回の改正に当たり、改めて、国会に対し、早急にこれらの論点についても議論を尽くし、憲法改正国民投票に国民の意思を正確に反映させるための法整備を行うよう、強く求めるものである。


 


 2014年(平成26年)6月13日

  日本弁護士連合会
  会長 村 越  進