国選付添人制度の対象事件を拡大する少年法改正に関する会長声明

本日、「少年法の一部を改正する法律」が、参議院本会議において可決、成立した。


この改正法により、従来、重大事件に限定されていた少年審判における国選付添人制度の対象事件が大幅に拡大されることとなる。


当連合会は、少年に適正手続を保障し、少年の立ち直りを支援する弁護士付添人の役割の重要性に鑑み、国選付添人制度の対象事件を少年鑑別所に収容されて身体拘束を受ける少年の事件全件にまで拡大するとともに、少年・保護者の請求による選任も認める全面的国選付添人制度を実現すべきであるとの提言を行い、その実現を求めて、少年鑑別所に収容された少年が希望する場合に弁護士が無料で面会する当番付添人制度と、国選付添人が選任されない少年に対して弁護士費用の全額を援助する少年保護事件付添援助制度を実施してきた。


今回の改正法は、国選付添人制度の対象事件を被疑者国選対象事件と同一範囲の長期3年を超える懲役・禁錮の罪の事件まで拡大するものであり、身体拘束事件の8割以上を対象とするものであって、国が少年の権利を保障する必要性・重要性を確認したという観点から大きな前進であると評価できる。


他方で、今回の改正法には、非行事実に争いがある場合に検察官の関与を認める制度の対象事件を国選付添人と同一の範囲に拡大すること、少年の刑事裁判において科しうる有期刑の上限を引き上げること等も盛り込まれている。当連合会は、予断排除の原則や伝聞法則の適用のない少年審判に検察官が関与することにより、少年が成人よりも不利益な地位に置かれ、真実の発見が困難になるおそれがあることを指摘してきた。また、未成熟な少年にとって長期受刑の弊害は深刻であり、社会復帰を困難にし、再犯のリスクを高めるおそれがある。改正法の運用にあたっては、このような懸念が払拭されるよう、今後とも,裁判所は検察官関与決定を行うに際しては、その要件及び必要性を慎重に吟味し謙抑的に判断すべきであり、審判に関与する検察官は、少年の特性を十分に理解し、少年が委縮することなく発言できるように配慮すべきである。また、少年に対する刑罰の適用においても、少年の健全育成という理念を尊重し、少年の更生と再犯防止に十分に配慮するべきである。


当連合会は、拡大された国選付添人制度の下で、これまで以上に、弁護士付添人が少年の権利保障・立ち直りの支援に寄与できるよう、対応態勢の整備と付添人活動の質の確保・向上を図り、裁量選任制度の下で国選付添人選任率を高める努力を行うとともに、仮に国選付添人が選任されなかった事件については、当番付添人制度及び少年保護事件付添援助制度を継続し、全ての少年が弁護士付添人の援助を受けられる体制を確保する。その上で、引き続き、全面的国選付添人制度の実現を求める取組を推進する決意である。



 



 2014年(平成26年)4月11日

  日本弁護士連合会
  会長 村 越   進