外国人の非熟練労働者受入れにおいて、外国人技能実習制度を利用することに反対する会長声明

政府は、東日本大震災後の復興及び東京オリンピック関連施設を建設するための建設労働者が不足しているとして、建設関係業種での外国人労働者の受入れのため、「年度内を目途に当面の時限的な緊急的措置にかかる結論を得る」意向を明らかにし(2014年1月24日の関係閣僚会議後の菅官房長官の定例記者会見)、その具体策として、技能実習制度を前提に、建設分野において、現行の「技能実習」の在留資格から「特定活動」の在留資格に変更してさらに2年間の在留を可能とし、また、一度、技能実習を終えて帰国した者についても現行制度で許可されていない再入国を許可して特定活動の在留資格で日本で働けるものとするよう、告示を定める案などが報じられている。


技能実習制度については、実習生による日本の技術の海外移転という国際貢献が制度目的として掲げられながら、その実態は非熟練労働力供給のための制度として運用されており、その名目上の目的ゆえに受入れ先である雇用主の変更が想定されておらず、受入れ先を告発すれば自らも帰国せざるを得ないという結果を生んでしまうことにより、受入れ先との間で支配従属的な関係が生じやすい。また、送り出し機関による保証金の徴収などの人権侵害が横行していることなどから、衆参両院も、2009年の入管法改正にあたっての附帯決議で、制度の抜本的見直しを行うべきこととしていた。当連合会も、これらの構造上の問題点を指摘し、技能実習制度の廃止を強く訴えてきたところである(「外国人技能実習制度の廃止に向けての提言」2011年4月15日、「外国人技能実習制度の早急な廃止を求める意見書」2013年6月20日)。国際的にも、米国国務省人身取引報告書(2013年6月19日)が、日本政府は技能実習制度における強制労働の存在を正式に認知していないと指摘するなどしている。


したがって、政府は、東京オリンピック開催の準備等を理由とした一時的な建設労働者の受入れを行うとしても、技能実習制度の存続を前提とした制度構築をするべきではない。


また、建設業分野で一時的な外国人労働者の受入れを行うとしても、技能実習制度で指摘された構造上の問題点を再度発生させないよう、労働者受入れ制度であることを前提とした制度構築を行い、雇用主変更の自由を認め、受入れのプロセスにおいて二国間協定の締結や公的機関の関与を強めるなどして対等な労使関係を実現する制度の在り方を検討し、国会で法改正を行うべきである。


さらに近時、建設業だけでなく、農林水産業などにおける労働者不足を理由に、技能実習制度についても、現行で最長3年間の技能実習期間を延長すること、再度技能実習生としての入国を許可することなどの意見が関係業界団体などを中心に提案されている。しかし、技能実習制度の構造上の問題点、現実の人権侵害の事例があるにもかかわらず、技能実習制度を維持・拡大し、受入れ期間の延長や再技能実習を認めることは、人権侵害の温床を拡大する結果となるものであるから、当連合会は、強く反対し、速やかな技能実習制度の廃止を改めて求めるものである。
 



 2014年(平成26年)4月3日

  日本弁護士連合会
  会長 村 越   進