「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案」に反対する会長声明

 

2014年3月7日、「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案」(以下「法案」という。)が閣議決定され、同日、今国会に提出された。


法案は、国家戦略特別区域法(以下「特区法」という。)附則2条に基づき、5年を超えるプロジェクトに従事する専門的知識を有する有期雇用労働者(第一種特定有期雇用労働者)や定年後に継続して雇用される労働者(第二種特定有期雇用労働者)を、労働契約法18条のいわゆる5年無期転換ルールの例外とし、最大10年まで有期労働契約のままで雇用することを認めるものである。


しかし、少なくとも第一種特定雇用労働者について最大10年の雇用契約を適用することについては、当該労働者の雇用関係を不安定にするおそれがあり、反対である。


労働契約法18条は、有期雇用労働者の雇用の安定を図る目的で昨年4月1日から施行されたばかりであり、適用事例はいまだ1件もない。法案は、この例外を拙速に導入しようとするものであり、労働政策審議会においても、僅か約1か月半の短期間かつ5回の審議のみで、労働者代表委員の反対意見を半ば強制的に打ち切る形で提案された。


そもそも労働政策立法は、ILO諸条約の規定を待つまでもなく、公労使の三者協議を経て決められるべきことが国際常識である。法案に関する手続は、公労使の三者協議の場である労働政策審議会の審議を事実上骨抜きにするものであり、その策定過程は到底容認できるものではない。


また、特区法附則第2条は、特例の対象となる労働者の要件に関して、「その年収が常時雇用される一般の労働者と比較して高い水準となることが見込まれる者に限る」との限定を付している。ところが、法案では、第一種特定有期雇用労働者にかかるこの限定をあえて法律上の要件とせず、厚生労働省令等で定めることができるようにしている。しかも、「年収」の「水準」については一切規定していない。かかる規定では、特区法附則第2条が定めた限定の枠を超えて、省令による特例の適用対象者の拡大が可能となってしまう懸念がある。


当連合会は、2008年10月3日付け「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人が人間らしく働き生活する権利の確立を求める決議」及び2012年4月13日付け「有期労働契約に関する労働契約法改正案に対する意見書」などにおいて、期間の定めのない直接雇用を原則的な雇用形態とすべきこと、有期労働契約の対象者を限定し、1年間での無期転換を実現すべきことなどを求めてきた。無期転換権の行使期間を一部労働者に対して10年まで延長する法案の方向性は、かかる当連合会の意見に反するものといわざるを得ない。


したがって、当連合会は、法案に反対するとともに、有期雇用労働者の雇用安定を確保し、同一価値労働同一賃金原則を実現することにより有期雇用労働者の待遇が向上するような方向性での法改正を行うよう強く求める。

 


 2014年(平成26年)3月26日

  日本弁護士連合会
  会長 山岸 憲司