国税不服申立制度の改革に関する会長声明

 

去る平成25年12月24日、政府は、「平成26年度税制改正大綱」(以下「税制改正大綱」という)を閣議決定した。

 

その中には、当連合会が意見書や会長声明によって推進を図ってきた国税不服申立制度の改革に関するいくつかの事項について改正がなされる旨が決定されている。

 

その内容は、以下のとおりである。

 

1 処分に不服がある者は、直接審査請求ができることとする(現行「異議申立て」と「審査請求」の2段階の不服申立前置)。なお、現行の審査請求に前置する「異議申立て」は「再調査の請求(仮称)」に改める。

 

2 不服申立期間を処分があったことを知った日の翌日から3月以内(現行2月以内)に延長する。

 

3 審理関係人(審査請求人、参加人及び処分庁)は、担当審判官の職権収集資料を含め物件の閲覧及び謄写を求めることができることとする(現行 審査請求人及び参加人の処分庁提出物件の閲覧のみ)。

 

4 審査請求人の処分庁に対する質問、審理手続の計画的遂行等の手続規定の整備を行う。

 

5 国税庁長官の法令解釈と異なる解釈等による裁決をするときは、国税不服審判所長は、あらかじめその意見を国税庁長官に通知しなければならないこととする。国税庁長官は、国税不服審判所長の意見を相当と認める一定の場合を除き、国税不服審判所長と併せて国税審議会に諮問することとする。国税不服審判所長は、その議決に基づいて裁決しなければならないこととする。

 

6 その他所要の措置を講ずる。

 

当連合会はかねてより、民主主義の成立と税制が深く結び付いていることをも考慮し、納税者の権利利益の保護について努力を重ねてきた。

 

特に、平成23年度税制改正においては、当連合会として国税通則法の改正に関する意見書、納税者権利保護法(仮称)の制定に関する立法提言、「国税通則法改正法案」に対する緊急意見書を発し、これが平成23年度税制改正における国税通則法の改正につながり、理由附記、事前通知等の質問検査権行使の規定の整備等がなされ、税制における適正手続保障に関する一連の改正として結実することとなった。

 

さらに、当連合会としては、平成26年度税制改正においては、平成23年度税制改正に引き続いて、国税通則法のうちの国税不服申立制度についての提言を行っているところである(平成23年度税制改正大綱(閣議決定)においては、遺憾ながら、国税不服申立制度に関する部分について、行政不服審査法の改正を待って行うこととされていた。)。

 

具体的には、2012年12月21日付け「国税不服審判所及び租税訴訟の制度改革に関する提言」によって、以下の諸点の改正を求めた。

 

① 不服申立前置の強制を廃止し、納税者が、事案や争点の特質に応じて、異議申立て、審査請求、訴訟提起を自由に選択できるようにする。

 

② 独立性を担保するため、国税不服審判所を国税庁から内閣府へ移管する。

 

③ 国税不服審判所の第三者性を確保し、納税者の信頼を確保するため、税務行政庁から国税不服審判所への出向を禁止する。

 

④ 納税者に適正手続を保障するために、不服審査手続において、全件同席主張審理の導入、処分庁担当者の出頭義務・回答義務を明定するなどして、対審構造を確保する。

 

⑤ 処分行政庁が提出した証拠や審判所が職権で収集した証拠を例外なく閲覧・謄写する権利等を確保するため、手続を整備する。

 

⑥ 租税訴訟における裁判所の専門性の向上を図るべく、裁判所に租税専門部を設置する。

 

⑦ 裁判所の公正性(中立性・公平性)について国民の信頼を確保するため、税務行政庁から裁判所調査官への出向を禁止する。

 

⑧ 不意打ちを防止するため、処分理由の差替え・後出しを認めない争点主義を採用する。

 

⑨ 柔軟かつ迅速な救済の一手段として、当事者の合意による解決制度を導入する。

 

当連合会は、今回の税制改正大綱による1ないし6の改正の諸点について、1は①、2及び4は④、3は⑤、5は②をそれぞれ前進させるものであって、正当な改正事項として評価するとともに、閣議決定の内容から後退することなく、速やかな法改正が実現されるよう強く要望する。

 

2014年(平成26年)1月8日

  日本弁護士連合会
  会長 山岸 憲司