大阪・泉南アスベスト国家賠償請求第2陣訴訟大阪高等裁判所判決に関する会長声明

大阪高等裁判所は、2013年(平成25年)12月25日、大阪・泉南アスベスト国家賠償請求第2陣訴訟において、国の規制権限不行使の責任を認める判決を下した。


本判決は、大阪・泉南地域における石綿紡織業の100年間にわたる発展の陰で、早くから石綿肺や肺がんなどの深刻な石綿被害が工場内外で発生してきたことについて、国が適時適切な規制権限行使を怠った結果深刻な健康被害が生じたものであるとして、2010年(平成22年)5月19日の大阪地方裁判所判決(第1陣訴訟)、2012年(平成24年)3月28日の大阪地方裁判所判決(第2陣訴訟)に続き国の責任を認めたものである。


2011年(平成23年)8月25日の大阪高等裁判所判決(第1陣訴訟)は、工業技術の発達や産業社会の発展を優先し、原告逆転敗訴の内容であったが、本判決は、国に対し、粉じん作業等に従事する労働者の健康を確保するために、省令制定権限を適時、適切に行使して、可能な限り速やかに技術の進歩や最新の医学的知見等に適合したものに改めるべき義務があったことを認め、国がその責務を十分に果たしてこなかったことを明らかにした。国民の生命と健康を守る責務は国にとって最も重要かつ基本的な責務であり、最高裁判所は上記第1陣訴訟の大阪高裁判決を見直すべきである。また、国は本判決を真摯に受け止めて、上告を断念し、早急に原告らの救済に取り組むべきである。


アスベストによる健康被害は、本件にとどまらず広範囲に及んでおり、今後も発生し続けることが懸念されている。また、建設作業従事者のアスベスト被害については全国で4地方裁判所と2高等裁判所で損害賠償請求訴訟が係属している。当連合会では、2006年(平成18年)1月18日付けで「『石綿による健康被害の救済に関する制度案の概要』に対する会長声明」を公表し、被害救済制度の創設に当たり、実効性のある被害救済を提言したが、現行制度は今なお不十分なものにとどまっている。


当連合会は、国が、本判決を受けて、現行の石綿健康被害救済法の全面的な見直しを行い、全てのアスベスト健康被害の全面的救済を行うことを強く求めるものである。また、今回の判決で改めてアスベスト被害の深刻さが明らかになったものであり、こうした被害発生を防止するために、建物解体時などのアスベスト飛散防止対策の一層の強化を求めるものである。

 

 

2013年(平成25年)12月25日

日本弁護士連合会

会長 山岸 憲司