秘密交通権侵害に対する国家賠償請求訴訟決定に関する会長談話

 

本年12月19日、最高裁判所(第一小法廷)は、佐賀県弁護士会所属の弁護士が担当していた被疑事件につき、弁護人と被疑者との接見内容を検察官が被疑者取調べにおいて聴取し、供述調書化した上で、公判において証拠として請求したことが、弁護人の秘密交通権を侵害するとして国家賠償を求めていた事件について、弁護士側の上告を棄却するとともに、弁護士側及び国側の上告受理申立てをいずれも受理しないとの決定を言い渡した。


これにより、検察官の行為が弁護人の秘密交通権を侵害する違法な行為であるとして、国に55万円の支払を命じた控訴審判決(福岡高等裁判所平成23年7月1日)が確定した。


控訴審判決は、弁護人と被疑者等との間の秘密交通権について、捜査の必要性を理由として接見内容の聴取をすることはできないとし、秘密交通権を例外なく保障した上で、更に捜査機関に対して「刑訴法39条1項の趣旨を尊重し、被疑者等が有効かつ適切な弁護人等の援助を受ける機会を確保するという同項の趣旨を損なうような接見内容の聴取を控えるべき注意義務を負っているといえ、(中略)起訴後も、検察官は、公判において、証拠調べ請求や被告人質問等の職務行為をするに当たり、被疑者等が有効かつ適切な弁護人等の援助を受ける機会を確保するという同項の趣旨を損なわないようにすべき注意義務を負っており」として秘密交通権の保障のための高い注意義務を認めたものであり、これは、秘密交通権の保障において重要な意義を有する。


しかし、控訴審判決のうち、相弁護人がマスコミの取材に応じて被疑者の言い分をコメントしたことに関しては、弁護人が報道機関に対して被疑者の供述を公表したからといって、その供述過程を含む秘密交通権が放棄されたとは認められないとしつつも、そのような供述を被疑者がした事実自体の秘密性は消失したとして、検察官が被疑者に対し、報道されたような供述を弁護人にした事実の有無やその理由を尋ねたことは違法ではないと判示している。相弁護人のコメントが、捜査機関の発表により被疑者の言い分と異なる報道がなされたことに対応したものであったことに鑑みると、最高裁判所が、控訴審のこの判断を是正しなかったことは遺憾であり、より一層の秘密交通権の保障を求めていくことについて今後に課題を残したものといえる。


弁護人と被疑者・被告人の秘密交通権の絶対的な保障は、充実した情報伝達を実現することで相互の信頼関係を形成するとともに、有効かつ適切な弁護活動を実現するための最も重要な基本的権利である。前述のとおり、今後の課題を残した判決ではあるものの、控訴審判決が確定したことを機に、改めて、捜査機関に対して、このような秘密交通権の侵害を繰り返さないよう徹底を求めるものである。
 

 

2013年(平成25年)12月25日

日本弁護士連合会

会長 山岸 憲司