再審請求前の死刑確定者と弁護人の秘密交通権の保障に関する最高裁判所判決を受けての会長談話

本年12月10日、最高裁判所(第三小法廷)は、死刑確定者と再審請求手続の弁護人との打合せのための接見に際し、当該死刑確定者を収容している刑事施設の長が職員を立ち会わせたことが違法であるとの判決を言い渡した。これにより、国に対し、再審請求手続の弁護人2名及び死刑確定者への国家賠償を命じた原審判決(広島高等裁判所平成24年1月27日)が確定した。当連合会は、再審請求前の弁護人と死刑確定者の秘密交通権の侵害を、原則として違法とする上記最高裁判決は、法の規定(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律121条ただし書)からも当然の帰結ではあるものの、これを評価するものである。


再審制度は、確定判決を受けた者について、新たな証拠に基づいて当該確定判決の誤りを是正し、無辜の者を救済することを目的とする、いわば刑事手続の最後の砦である。検察官以外の再審請求人は弁護人選任権が保障されており(刑事訴訟法440条1項)、再審請求に当たって、再審請求人と弁護人の打合せは、必要不可欠であり、そのための接見の機会とその秘密性が十分に保障される必要がある。


そして、現在の再審制度においては、再審開始決定に至る以前の再審請求手続の過程が決定的に重要であり、再審請求手続における弁護人には、再審開始決定後の弁護人と異ならない活動が必要とされている。


そのため、再審請求手続及びその準備段階においても、受刑者又は死刑確定者から再審請求の依頼を受けた弁護人に、刑事施設職員の立会いのない秘密接見が認められなければ、再審請求に向けた適正な手続が保障されているとはいえない。


これまで、多くの刑事施設では、再審開始決定確定前の受刑者又は死刑確定者と弁護人等との接見について、秘密交通権の保障を前提とせず、原則として職員の立会いの下で行われるべきであるとして、刑事施設の長の裁量によって立会いの必要性の有無を判断する運用が行われていた。

 

当連合会は、全ての刑事施設が、上記最高裁判決を真摯に受け止め、今後は、受刑者又は死刑確定者と再審請求の依頼を受けた弁護人等との接見が、刑事施設職員の立会いなく実施されるよう求める。


2013年(平成25年)12月13日

 日本弁護士連合会
 会長 山岸 憲司