「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」の成立に関する会長声明

2013年(平成25年)12月4日、第185回臨時国会において、集団的消費者被害回復のための新たな訴訟制度の導入を内容とする「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案」が可決され、成立した。


当連合会は、かねてより、集団的消費者被害回復のための新たな訴訟制度の早期実現を求めており、同法案が成立したことは我が国の消費者問題に関する歴史において画期的なこととして評価できる。


本法律による新制度は、消費者契約に関わる一部の類型に限定されるものとはいえ、これまで十分に被害が救済されてこなかった消費者にとって、被害をより容易に回復できるようになることが期待されるものであり、施行後は積極的に新制度が活用されることが望まれる。


一方、新制度を、被害者や訴えを提起する特定適格消費者団体にとって使いやすいものとして、より効果的に活用するという観点から、本法律の施行までの間に更に議論や検討をすべき点もある。当連合会は、特に以下の点について、政府において引き続き取組がなされるよう求めるものである。


1 本法律では、法律施行前に締結された消費者契約に関する請求権等については対象としないものとする適用制限規定が置かれている。本来、施行日の前後により請求権の時的範囲を制約することは、対象となる消費者にとって不合理な区別であり、このような制限規定が設けられたことは極めて遺憾であるが、政府においては、不合理にも保護の対象から外されてしまった消費者に対しても、十分な保護が図られるよう、国民生活センターの裁判外紛争解決手続(ADR)等の充実化を図るとともに、新制度による訴訟が提起されたことが分かるように、消費者に対する情報提供を行政の費用と責任において積極的に行うことを求めるものである。


2 本法律では、簡易確定手続における対象消費者への通知又は公告に要する費用の負担や、仮差押え手続における担保金の負担といった費用面をはじめ、手続を主体的に追行することとなる特定適格消費者団体の負担が非常に重いものとなっている。新制度の実効性を高め、十分な消費者被害救済を図るためには、財政的な支援制度あるいは情報面を含めた間接的に特定適格消費者団体の負担を軽減しうるような措置が是非とも必要である。政府において、実効性のある措置の検討を行うよう求めるものである。


3 新制度における詳細な手続等については、政令等や最高裁判所規則に委ねられている部分も多い。これらの規定は、新制度の実効性に大きく関わるものであるから、政府や最高裁判所において、これらの政令等を定めるにあたっては、制度の担い手となりうる適格消費者団体や手続に参加することとなる消費者の意見を十分に踏まえるべきである。

 

当連合会は、上記のような課題を踏まえ、本法律の施行後において適切な実務運用が確立され、新制度が消費者被害の実効的救済に真に資するものとなるよう、あらゆる支援を惜しまないことをここに表明するものである。


   

 

 2013年(平成25年)12月4日

  日本弁護士連合会
  会長 山岸 憲司