死因究明等推進計画検討会中間報告書に対する会長声明

本年6月20日、死因究明等推進計画検討会(以下「検討会」という。)は中間報告書を発表した。



2012年6月に成立した「死因究明等の推進に関する法律」(以下「推進法」という。)に基づき、死因究明等の推進に関して講ずべき必要な法制上又は財政上の措置を定める死因究明等推進計画(以下「推進計画」という。)の案を作成する死因究明等推進会議(以下「会議」という。)が内閣府に設置された。そして、推進計画の案の作成に資するために、会議の会長が指名する委員及び専門委員により構成される検討会が開催され、その中間報告書が発表されたものである。



この間、当連合会は、本年4月19日付け「死因究明推進を目的とした検案・解剖等の制度確立に関する提言」を発表し、特に、死因究明を行う中立的・専門的な第三者機関の全国的な整備についての具体的な計画を早急に策定すべきことを求めてきた。当連合会の提言に鑑みると、中間報告書は極めて不十分な内容である。



中間報告書では、「関係行政機関等への提言」として、様々な施策を各省庁において行うべきことを提言しているものの、これらは、「研修の充実」や一定の事項の「周知」といった、現状を前提として比較的容易に対応できるものが多くを占めている。



そもそも、推進法は、「死因究明が死者の最後の時点における状況を明らかにするものであることに鑑み、死者及びその遺族等の権利利益を踏まえてこれを適切に行うことが生命の尊重と個人の尊厳の保持につながるものであるとの基本的認識の下で行われ」、「人の死亡が犯罪行為に起因するものであるか否かの判断の適正の確保、公衆衛生の向上その他死因究明に関連する制度の目的の適切な実現に資するよう、行われるものとする」との基本理念を掲げた2年間の時限立法である。



とするならば、推進法が掲げた8項目の「重点的に検討され、及び実施されるべき施策」のうち、「死因究明を行う専門的な機関の全国的な整備」及び「死体の検案及び解剖の実施体制の充実」は、早急に整備すべき最重要課題である。この点につき、検討会委員の多くは、第三者的死因究明センターを設置して検案や解剖等の質を高め、死因究明によって得られた情報を生者の利益のために使用し、国民が地域間格差なく等しく利益を享受できる態勢を作る必要がある、と述べたのに対し、関係省庁が揃って消極的意見を述べた結果、これらの最重要課題については、何ら明確な方向性も示されず、全く見通しの立たない状況である。



しかも、死因究明事業は、複数の関係省庁にまたがる事業であるため、内閣府に会議が置かれたが、現時点では、所掌すべき省庁も決まっていない状況である。



このようなことでは、推進法の目指した推進計画を、2年間という限られた期間内で策定することはできないおそれがある。死因究明等の推進は、国民的な課題である。関係各省庁は、法の趣旨を尊重し、法の目的を早急に達成するよう真剣に取り組み、内閣府においては、望まれる推進計画策定が可能となるよう更に努めることを強く要請する。

 

2013年(平成25年)6月27日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司