死刑再審無罪者に対する国民年金保険料納付特例法に関する会長声明

本日、死刑再審無罪者に対し国民年金の給付等を行うための国民年金の保険料の納付の特例等に関する法律案が、第183回国会にて可決され、法律として成立した。この特別立法により、死刑判決を受け当該判決が確定した後に、再審で無罪が確定したえん罪被害者が、国民年金を受給できることとなった。この立法的措置は、死刑再審無罪者に対し、遡って年金相当額の支払いをすることとしており、えん罪被害者が年金保険料の負担をすることとなっている点は遺憾であるが、この点を除いては、えん罪被害者の救済の見地から評価することができる。



当連合会は、かつて死刑判決を受け当該判決が確定した後に、再審で無罪が確定したえん罪被害者から国民年金の受給を求める人権救済申立てを受け、2002年(平成14年)1月17日に、国に対し、年金加入の機会を不当に奪われたえん罪被害者が国民年金を受給できるよう必要な措置を早急に講じるよう勧告を行ったが、その後も必要な措置が講じられなかったため、2010年(平成22年)12月21日に改めて警告を行い、速やかな立法化を図るよう求めるなど、えん罪被害者の救済のために支援を行ってきた。



えん罪被害者が無年金状態となる原因は、えん罪被害者が国のえん罪という過ちによって確定死刑囚とされ、将来的に社会復帰を想定し年金生活を視野に入れた対応をとることを期待することが困難な状況が作出されたところにある。したがって、国民年金保険料の納付あるいは保険料免除の申請を行わなかったことの不利益を、えん罪被害者本人に帰責させることは許されない。



人権救済申立てをした当該えん罪被害者が既に高齢であることからも、当連合会は、上記特例法の適正な運用と同法による迅速な救済が行われることを期待するとともに、今後も、えん罪被害者の救済のために、あらゆる支援を惜しまないことをここに表明する。

 

2013年(平成25年)6月19日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司