消費者庁「消費者の財産被害に係る行政手法研究会」の報告書に対する会長声明

 

本年6月14日、消費者庁は、消費者の財産被害に係る行政手法研究会(以下「行政手法研究会」という。)が取りまとめた「行政による経済的不利益賦課制度及び財産の隠匿・散逸防止策について」(以下「報告書」という。)を公表した。



行政手法研究会は、行政による経済的不利益賦課制度及び財産の隠匿・散逸防止策について、①行政による早期対応、②被害発生を防止するための方法、③事業者の財産を保全するための方法、④消費者の被害を救済するための方法の4つを検討し、今後、導入すべき具体的な手法・制度について検討を深め、優先順位が高いものから、早期に必要な法整備が着実に進められていくことが期待されると報告書にとりまとめた。



報告書は、不当表示が措置命令によって一般的に抑止されているとは言えず、不当表示事案を対象として、新たな措置の一つとして賦課金制度を導入する意義が認められると指摘している。当連合会は、2011年8月18日付け「不当景品類及び不当表示防止法の抜本的改正等に関する意見書」において、不当表示による消費者被害を防止するため、課徴金制度又は経済的不利益賦課制度を導入すべきであるとの意見を述べてきたところである。政府は、専門調査会又は研究会を速やかに設置して、不当表示事案を対象とする課徴金制度の制度設計を具体的に検討し、不当景品類及び不当表示防止法を早期に改正すべきである。



報告書は、事業者の財産の隠匿・散逸防止策として、消費者庁に破産手続開始申立権を付与することを検討し、公益性の観点からその対象となる事案のイメージなどを検討している。当連合会は、2011年8月18日付け「消費者庁の『財産の隠匿・散逸防止策及び行政による経済的不利益賦課制度に関する検討チーム』取りまとめに対する会長声明」において、破綻必至の投資・利殖詐欺事案の財産の隠匿・散逸防止策として、消費者庁に当該事業者の破産手続開始の申立権限を認めることが適当であるとの意見を述べてきたところである。政府は、専門調査会又は研究会を速やかに設置して、消費者庁に破産手続開始申立権を付与することが適切な事案の要件等を検討し、早期に立法による実現をすべきである。


また、報告書は、消費者の被害を救済する方法として、行政が被害金額の返還を命じることとなる制度や、行政が裁判所に対して事業者に対する被害回復又は違法な収益の吐き出しの命令を申し立てる制度を検討している。当連合会は、2008年2月15日付け「『消費者庁』の創設を求める意見書」において、消費者庁が裁判所に申立てをして捜索差押えの許可や違法な事業活動の停止命令、資産の凍結命令、凍結した資産を換価して被害者へ分配する許可を得て、消費者被害者への配当原資を確保した上で、被害を受けた消費者全体のために事業者に対する損害賠償請求訴訟を提起し、勝訴判決に基づく損害賠償金を被害者に分配することができる制度を導入すべきとの意見を述べてきたところである。政府は、諸外国の制度も参考にして、特に悪質商法による消費者被害救済のため、事業者の資産を迅速に保全した上で消費者の被害回復を図る制度を実現すべく、検討チームを速やかに立ち上げて、理論的検討を開始すべきである。



当連合会は行政手法研究会の報告書の公表を受けて、以上の内容について特にその動向を注視していくとともに、引き続き消費者被害の予防・救済、消費者の権利の確立に向けて尽力する決意を表明するものである。 

   

 

2013年(平成25年)6月14日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司