復興庁参事官によるツイッターへの不適切な投稿に対して抗議し、改めて原発事故子ども・被災者支援法に基づく基本方針の早期策定及び具体的施策の早急な実現を求める会長声明

本日の新聞報道によれば、復興庁において、原発事故子ども・被災者支援法(以下「支援法」という。)の基本方針の取りまとめに当たっていた参事官が、自らの発信するツイッター上に、被災者支援に取り組む市民団体、国会議員、地方自治体関係者らに対する中傷と暴言を繰り返し投稿していたことが発覚した。



当該参事官は、当連合会が参加している「原発事故子ども・被災者支援法ネットワーク」が主催した集会をはじめとして、市民や国会議員が支援法に関して催した多くの会合に復興庁を代表して出席していたが、それらの席上で、「いただいた意見は復興大臣に確実に伝え、政府として速やかに基本方針をまとめていく」という趣旨の発言を行ってきた。



ところが、当該参事官は本年3月8日の投稿で、「今日は懸案が一つ解決。正確に言うと、白黒つけずに曖昧なままにしておくということに関係者が同意しただけなんだけど、こんな解決策もあるということ」とコメントしている。これは、その直後の3月15日に復興庁が「原子力災害による被災者支援施策パッケージ」を公表したことをもって、事実上、支援法に基づく基本方針の策定を先送りしたことを指していると考えざるを得ない。



この施策パッケージについては、当連合会は3月22日付け会長声明において、「そのほとんどが既に実施されている施策を並べたものにすぎず、法第5条が、法の基本理念に基づいて定めるべきとしていた『基本方針』ではない」、「被災者の意見が反映されておらず」、「避難する者にも被災地域にとどまる者にも帰還する者にも、その意思決定を尊重し、被ばく低減のための必要な支援を行うとした支援法の理念が実現されていないことは極めて残念である」などの意見を述べたところであるが、前記コメントから推測すると、このパッケージ自体が、「白黒つけずに曖昧なままにしておくということに関係者が同意した」ものにすぎないということを事実上の責任者が自認していたとの疑念をぬぐい去れない。



当該参事官は、前記のとおり支援法に関する集会にこまめに参加するなど、被災者の置かれた実情に理解を示し、支援法の理念に基づいて、真に被災者に寄り添う「基本方針」の策定のために尽力をしてきたと考えられていたが、この度明らかになったコメントにあるような認識の下で業務に当たっていたのであるとすれば、被災者に対する著しい背信行為であるといっても過言ではない。



既に、本日開催された衆議院東日本大震災復興特別委員会において、根本復興大臣が謝罪し、事実関係を調査の上、適切に対処する旨言明しているが、そもそもこのような担当者を任命した政府の責任は重いといわざるを得ず、精神的にも経済的にも苦しい生活を強いられている被災者をさらに苦しめるものである。



当連合会は、政府に対し、今回の事態を招いた責任を深く反省し、改めて支援法の理念を深く認識することを求めるとともに、その具体化のために、復興庁内に支援法に基づく基本方針策定のための責任ある部署を新たに立ち上げ、福島県内だけでなく避難者のいる全国各地で被災者の意見を正式に聞く機会を設けた上で、全会一致で制定された支援法の趣旨に忠実な基本方針を速やかに策定し、被災者支援のための具体的施策を早急に実現するよう、強く求めるものである。 

   

 

2013年(平成25年)6月13日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司