国連社会権規約委員会の総括所見に関する会長声明

 

国連の経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(以下「社会権規約」という。)の実施状況に関する第3回日本政府報告書について、国連社会権規約委員会は2013年4月30日に審査を行い、同年5月17日付で総括所見を公表した。同規約の批准国である我が国は同規約の実施義務を負い、同委員会から勧告された事項について改善すべき義務を負う。

 

この総括所見は、差別、労働、社会保障、震災・原発事故及び教育など31項目に及ぶ勧告を我が国に対して行っている。とりわけ以下の事項が重要であると考える。

 

第1は、国内法体系において規約を全面的に実施するために必要な措置をとることを改めて求められるとともに、規約上の権利に対する国の最低限の中核的義務は即時に実施すべきであると指摘されたことである。また、司法研修所のカリキュラムや弁護士ら司法専門職を対象とする研修プログラムにおいて、規約上の権利の裁判適用可能性を十分に取り上げるよう求められた(7項)。

 

第2は、パリ原則に則った国内人権機関の速やかな設置が求められたことである(8項)。これは前回の総括所見でも求められ、当連合会もかねてから強く求めてきたことでもある。

 

第3は、ジェンダーの役割に関する社会の認識を変革するためのキャンペーンの実行、労働市場における男女の就業機会の平等に向けた教育の実施、男女共同参画基本計画における、教育・雇用・政治的公的決定の分野での男女割当を含む大胆な目標の設定(13項)、同一価値労働について男女で異なる評価額を適用することの違法性等の意識啓発(19項)など広く女性差別の解消が求められたことである。

 

第4は、東日本大震災・福島原発事故について、災害対応・危険の低減及び復興のための取り組みにおいて人権を基礎とするアプローチをとること、特に社会権の享受において差別のない災害管理計画を確保すること(24項)、並びに原子力施設の安全に関する透明性の確保と原発事故対策の確立、特に予想される危険、予防措置及び対策に関する広範な、信頼性のある正確な情報の住民への提供と事故発生時のすべての情報の速やかな開示等を求められたことである(25項)。

 

その他、我が国の生活保護費の削減を含む社会保障予算の削減に関して、社会保障の後退禁止原則の確保を求められ、給付の削減が受給者の社会権への打撃とならないよう注意を促されたこと(9項)、国民年金制度における最低年金保障の導入と生活保護申請者の取扱いにおける尊厳の確保(22項)、雇用における差別禁止及び合理的配慮の実施義務を含む障害者基本法の改正を求められたこと(12項)、女性、婚外子等に対する差別的な法律の見直しを促されたこと(10項)、高校無償化制度を朝鮮学校にも即時に適用すべきとされたこと(27項)等も重要である。さらに日本軍「慰安婦」に関して社会権の享有の保障等のために必要な措置をとること、「慰安婦」に対するヘイト・スピーチその他の示威行動の防止のために公衆に対する教育を行うことも勧告されている(26項)。

 

日本政府は、これらの総括所見の勧告事項について、誠意をもってその実現のために努力をすべきであり、当連合会としても、日本政府及び関係機関と建設的対話を重ねながら、全力をあげてその実現に向けて取り組む所存である。

 

 

 

2013年(平成25年)5月27日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司