被災者生活再建支援法の福島第一原子力発電所事故の長期避難者への適用を求める会長声明

 

福島県浪江町は、本年4月10日、国及び福島県に対し、東日本大震災に起因する原発事故による長期避難世帯を被災者生活再建支援法の長期避難世帯と認めるよう求める要望書を提出した。当連合会は、その内容に賛同し要望を支持する。



そもそも、被災者生活再建支援法は、自然災害により生活基盤に著しい被害を受けた者に支援金を支給する制度であり(同法第1条)、東日本大震災においても被災者に対する基本的かつ重要な支援策と位置付けられている。その支援対象は、家屋被害を受けた世帯だけでなく、県知事が認定する長期避難世帯も含まれる。したがって、長期避難を余儀なくされている多くの避難者(15万人以上が福島県内外に避難)に対しては、本来、被災者生活再建支援法による救済が強く期待されるところである。



ところが、福島県では、福島第一原子力発電所事故(以下「本件原発事故」という。)によって長期避難を余儀なくされた被害者を認定の対象外とし、支援金を支給していない。こうした避難者に対する厳しい措置は、被災者生活再建支援法の支援対象を自然災害の被災者のみとし、本件原発事故は東京電力が引き起こした人災であるから対象から外れるとした国の狭い限定解釈に、福島県が依拠しているところに原因がある。



しかし、2012年7月5日に公表された東京電力原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)の報告書においても、本件原発事故の「直接的原因は、地震及び地震に誘発された津波という自然現象である」と結論付けられている。本件原発事故が、地震・津波に起因していることは疑いなく、本件原発事故と自然災害との間に因果関係があることは明らかである。



被災者生活再建支援法は、自然災害に起因する災害については、直接又は間接を問わず、支援の対象としている。元来、被災者の生活再建を広く支援するところに法の目的があり、数次にわたる改正経緯、現行制度の運用実態からしても、本来、弾力的な解釈と運用を行うべきものであって、限定的な解釈は妥当ではない。むしろ、長期避難世帯を対象外とする限定解釈は、被災者生活再建支援法の精神に反するものというべきである。



当連合会は、2011年7月29日付けで公表した「被災者生活再建支援法改正及び運用改善に関する意見書」の中で、①長期避難世帯の認定(同法第2条第2号ハ)を早期に行うべきこと、②本件原発事故によって避難等を指示された世帯だけでなく、被ばくを避けるために避難することが必要かつ合理的と認められる世帯に対しても被災者生活再建支援法を適用すべきことを提言した。



本件原発事故による避難者は、避難生活の長期化により生活資金が枯渇して困窮しつつある。こうした避難者が置かれた現状に鑑みれば、原発事故損害に対する適切な賠償、福島復興再生特別措置法及びいわゆる原発事故子ども・被災者支援法による生活再建施策の実現を急ぐだけではなく、実態にそぐわない被災者生活再建支援法の限定解釈を直ちに見直し、被災者生活再建支援法を弾力的に運用して早期に支援金を支給するのが相当である。



よって、当連合会は、浪江町の要望を支持しつつ、国及び福島県に対し、被災者生活再建支援法の解釈を見直し、福島県における本件原発事故による長期避難世帯の認定を積極的に行い、支援金の支給による救済を進めることをあらためて求める。

 

2013年(平成25年)4月26日

日本弁護士連合会

会長 山岸 憲司