いわゆる「子どもの貧困対策法」の実効性確保のため、子どもの貧困率削減の数値目標の設定等を求める会長声明

 

国会で、我が国の子どもの貧困対策を前進させるための「子どもの貧困対策法」の法案作成、提出に向けた動きが活発化している。



民主党は、本年3月12日、我が国の子どもの貧困率を数値目標を定めて削減することや、国や都道府県が子どもの貧困対策計画を作ることなどを柱とする子どもの貧困対策法案を党内で取りまとめ、今国会に提出する意向を表明した。



本年4月5日付けの報道によると、自民党も、子どもに対する教育支援などを、生育環境によって将来を左右されることがないよう講じることを基本理念に掲げた「子どもの貧困対策法案」の準備を進めているとのことであり、超党派の議員立法として今国会に提出する動きが活発化している。



当連合会は、深刻化する我が国の子どもの貧困問題の解決に向けて、2010年10月8日の第53回人権擁護大会において「貧困の連鎖を断ち切り、すべての子どもの生きる権利、成長し発達する権利の実現を求める決議」を採択し、国及び地方自治体に対し、子どもの貧困削減について期限を定めた目標設定を行い、速やかに総合的かつ具体的な子どもの貧困対策を策定することを求め、具体的施策として、保育施設の量的拡充及び質的向上、公立の義務教育課程及び高校の学費の完全無償化並びに高等教育や私立高校についての経済的負担の軽減、ひとり親世帯への生活全般の支援の充実、社会的養護の制度の充実等を求めた。



当連合会は、子どもの貧困対策法の制定が目指されていることについて、子どもの貧困削減に向けた大きな一歩としてこれを評価するものである。



これに関して、まず、貧困率削減の数値目標を定めることについては、これに難色を示す動きがある。



しかし、ユニセフの研究機関の昨年5月の発表によると、我が国の子どもの相対的貧困率は、OECD35か国中9番目に高い14.9%であり、実に7人の1人以上の子どもが貧困状態にある。



また、厚生労働省の昨年10月の発表によると、ひとり親世帯の相対的貧困率は50.8%にもなっている。


このような異常な状況の中で、子どもの貧困対策は待ったなしの喫緊の課題であり、具体的な貧困率削減の数値目標を伴わない法律は実効性に欠け、骨抜きになる可能性が高い。



次に、民主党案では、基本的施策の一つとして「乳幼児期からの早期対応の充実」を掲げているが、その内容としては「保健指導等に係る体制の整備その他の必要な施策」とあるのみで、子どもの成長発達にとって重要な役割を持つ保育の充実に言及しておらず、また、貧困による不利益が最も顕著に表れる家庭で養育されることが困難になった子どもに対する社会的養護の制度の充実にも言及がない。



当連合会は、法案提出が検討されている子どもの貧困対策法が、子どもの貧困問題の解決に向けて真に実効性のあるものとなるよう、同法に以下の内容を盛り込むよう求める。



1 子どもの貧困率削減につき、期限を定めた具体的数値目標を設定すること。



国は、前記の目標について、最終年度に目標達成状況を報告し、目標を達成できなかった場合にはその理由を説明すること。



2 基本施策の中に以下のものを明記すること



(1) 保育施設を量的に拡充し、かつ、質的に向上させること。



(2) 家庭で養育されることが困難になった子どもに対する社会的養護の制度の充実を図ること。

 

2013年(平成25年)4月11日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司