スポーツ指導からの暴力の排除を求める会長声明

今般、公立高校バスケットボール部部員の自殺事件に端を発して、中学・高校の運動部活動の指導や、さらに柔道女子の日本代表チームにおいても、暴力を行使した指導が行われていたとする報道がされている。
そもそも暴力は、犯罪にも該当しうる行為であるとともに、人の自由な活動を不当に制圧するものであって、近代社会における法の支配の原則と相容れるものではない。スポーツにおいても暴力が排除されるべきことは、スポーツに関する基本的権利を謳っているオリンピック憲章の理念や精神からも明らかである。



それにもかかわらず、わが国のスポーツの指導において、暴力が行使される事態が今日まで見逃され、それが報道されているとおりナショナルチームにまで及んでいたとするなら極めて遺憾であるといわざるを得ない。
当連合会は、2010年(平成22年)8月20日、「スポーツ基本法の立法に向けての意見書」を公表し、その中で、スポーツの分野はそもそも法の支配がおよびにくい背景及び体質を有し、この分野において法の支配を確立すべき必要性が高いことを指摘し、スポーツ基本法に、スポーツにおける暴力、セクシャルハラスメント等の防止を明記することを求めていた。



今般の事態を受けて、国は前記当連合会の提言を再認識のうえ、スポーツ基本法の改正に着手し、また各スポーツ団体は、スポーツの指導から暴力を排除することを自ら明確にするとともに、徹底した実態調査を行い、暴力を用いない合理的な指導方法の研究と確立、中立性・専門性の高い相談・通報窓口の設置等を速やかに行って、再発防止に努めるべきである。



また、スポーツの指導から暴力を排除するためには、スポーツ団体の閉鎖的な体質を変えていくことも必要であり、スポーツ団体の政策・方針決定過程における男女共同参画をすすめることも、早急に着手すべき重要な課題と考える。



オリンピックが示すように、スポーツは社会に希望と勇気をもたらす大きな力を持っている。当連合会は、スポーツから暴力が排除され、法の支配が確立されることを強く望むものである。


 

2013年(平成25年)2月13日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司