行政事件訴訟法の第二次改正に向けた取組を求める会長声明

法務省は本年11月22日、行政事件訴訟法の2004年改正法附則50条に基づく見直しを進めてきた「改正行政事件訴訟法施行状況検証研究会」の報告書を公表するとともに、「平成16年改正行訴法について政府として講ずべき措置がなお存しないかどうかについては、引き続き関係機関・団体と連携しつつ注視する」とし、行政事件訴訟法の第二次改正に向けた具体的な取組を直ちには行わない旨をホームページにおいて公表した。


しかし、わが国の行政訴訟件数が諸外国と比較しても依然として圧倒的に少なく、人口比で数百分の一から数十分の一に過ぎないのは、国民が現行の行政訴訟制度に絶望しているからに他ならず、これは上記改正後もほとんど変わりはない。同報告書内の指摘にもあるように、改正行政事件訴訟法には厳格過ぎる訴訟要件など数々の問題点があり、今次何らの改正も行わないことは極めて不当である。また、団体訴訟制度の導入など第一次改正で積み残され、論点整理が行われた4課題に手を付けることさえせずにその実現を放棄することは許されない。


法務省は、第二次改正につき、引き続き注視するとするが、このまま何らの措置も講じられない状態が続くことが非常に強く懸念される。


当連合会は、2010年11月に「行政事件訴訟法5年後見直しに関する改正案骨子」を取りまとめ、さらに2012年6月に同骨子案を条文化し、行政訴訟に携わる最前線の弁護士の意見を反映させた改正案を公表するなどし、研究会の中でも弁護士委員は、ユーザーである国民の立場から改正意見を述べ、第二次行政訴訟改革を着実に実現させるべく、具体的な提案をしてきたが、これらの提案は充分顧慮されることなく、この度の改正への消極結論に至ったものであり、甚だ遺憾である。


そもそも行政訴訟改革は、行政の肥大化の中で、司法の行政に対するチェック機能を強化する重要課題であり、国民的な議論をする場が必要である。


当連合会は、今後とも改正に向けた積極的な活動を展開していく所存であるが、政府に対し、行政事件訴訟法の第二次改正に向けた検討組織を内閣府に設置することを強く求めるものである。

 

2012年(平成24年)11月29日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司