レッド・パージ国家賠償請求訴訟大阪高裁判決に関する会長談話

本年10月24日、大阪高等裁判所は、日本共産党の党員又はその同調者であることを理由とする免職処分又は解雇を受けた3名が国に対して国家賠償を求めた裁判で、控訴を棄却する判決を下し、3名の請求を棄却するとの結論を維持した。



本判決は、マッカーサー書簡は共産党員又はその同調者を排除すべきことを要請する指示であると解釈した上で、その指示は占領下において超憲法的効力を有していたから、3名に対する免職又は解雇は有効であること、講和条約発行後に日本政府が救済すべき作為義務が発生するのは、日本政府が実質的に当該レッド・パージを主導し、連合国最高司令官の強大な権限を積極的に利用したような場合に限られるが、本件レッド・パージは日本政府がレッド・パージを主導して行ったものと認めるに足りる証拠はないなどを理由として、国家賠償法上の国の責任を否定した。



当連合会は、レッド・パージにより免職又は解雇された申立人らからの人権救済申立事件について、これまで2度にわたり、レッド・パージは憲法で保障された思想良心の自由、法の下の平等という民主主義の根幹に関わる人権の侵害であり、占領下の連合国最高司令官といえどもかかる人権侵害は許されないこと、日本政府も占領下でレッド・パージを積極的に推し進めようとしていたと認められること、そうである以上、平和条約発効後に主権を回復した日本政府は自主的にレッド・パージによる被害の回復を図るべき責任があったこと等を前提として国の人権侵害性を認め、可及的速やかに、被害回復のための名誉回復や補償を含めた適切な措置を講ずるよう勧告してきた。



本判決は、国家賠償法上の賠償責任を否定したが、これまで当連合会が2度にわたり勧告しているとおり、レッド・パージにおける日本政府の責任は重大であるといわざるを得ない。また、国は当連合会の勧告を受けたにもかかわらず、関係機関が判明しなかったとして何らの検討すら行っていなかったことが今回の訴訟手続において明らかとなった。誠に遺憾であり、当連合会は、政府に対し、改めて、当連合会の勧告の趣旨を踏まえて、レッド・パージの被害者の被害回復のための適切な措置を講ずることを求める。 

 

2012年(平成24年)11月1日

日本弁護士連合会
会長  山岸 憲司