参議院選挙定数配分に関する最高裁判所大法廷判決についての会長声明

本日10月17日、最高裁判所は、2010年7月11日に施行された第22回参議院議員通常選挙(選挙区選出議員選挙)に対し、各選挙区における議員定数が選挙区人口に比例して配分されておらず、最大で5.00倍の投票価値の格差が生じていたこと等を理由として各地で提起された選挙無効請求訴訟について、請求を棄却したものの、「本件選挙当時、選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたというほかはない」旨の判決を言い渡した。



2009年9月30日、最高裁判所は、最大で4.86倍の投票価値の格差があった2007年7月29日に施行された第21回参議院議員通常選挙(選挙区選出議員選挙)に対し、「定数配分規定が憲法に違反するに至っていたものとすることはできない」としつつも、「国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤であり、投票価値の平等が憲法上の要請であることにかんがみると、国会において、速やかに、投票価値の平等の重要性を十分に踏まえて、適切な検討が行われることが望まれる」とする判決を言い渡していた。



しかしながら、国会が何らの対応策を講じないまま第22回参議院議員通常選挙が施行されたために、投票価値の不平等はより拡大し、本件選挙の当時、鳥取県の有権者が1票の選挙権を持つのに対し、神奈川県の有権者は僅か0.2票分の選挙権しかないという不平等が生じていた。



憲法は、参議院議員を衆議院議員と同様に全国民の代表と位置づけており、決して都道府県代表としていない。しかしながら、公職選挙法(別表三)は選挙区選出議員の選挙区を都道府県単位で規定しており、このことが投票価値の平等の実現を妨げている。



本判決は、「参議院議員の選挙であること自体から、直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難い」とし、この都道府県ごとの選挙区割りについて、これを参議院議員の選挙区の単位としなければならないという憲法上の要請はないとして、「単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ、できるだけ速やかに違憲の問題が生ずる前記の不平等状態を解消する必要がある」とした。



本判決が、2009年判決をさらに進めて立法的措置の必要性に言及し、当連合会がかねてより求めていた投票価値の平等の実現を国会に求めた点は評価することができる。



当連合会は、「公職選挙法改正に関する要綱案」(1984年3月提案)や、「衆議院選挙定数配分に関する最高裁判所大法廷判決についての会長声明」(2011年3月25日)などにおいて、投票価値の平等を実現するよう、国に対して一貫して求めてきたが、あらためて、本判決の趣旨を踏まえ、直ちに公職選挙法を改正するよう求めるものである。


2012年(平成24年)10月17日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司