「国民生活センターの国への移行を踏まえた消費者行政の体制の在り方に関する検討会報告書」に対する会長声明

本年8月22日、内閣府の「国民生活センターの国への移行を踏まえた消費者行政の体制の在り方に関する検討会」は、報告書を取りまとめた。また、同報告書を受けて同月28日に内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全担当)から「消費者行政の機能強化を目指して」との声明が公表されている。



同報告書は、独立行政法人国民生活センターの各機能の維持・充実を図りながら、各機能の一体性や業務運営・人事面での独立性を確保すべきとしている点や、消費者委員会の独立性の尊重について指摘している点などは評価できる内容となっている。



しかし、同報告書において国民生活センターの国への移行に際し、「管理部門を統合することにより、業務全体の効率化を図」るとされている点は懸念が残る。この点「事業部門の人員・体制を充実させるなど、消費者行政におけるより高度な行政サービスの提供を実現することが可能となると考えられる」との記載もあるが、具体的にどの程度の人員を削減した上で事業部門の人員をどの程度増員するのか、管理部門と事業部門の兼任は無いのか、また国民生活センターの機能の相当部分を担っている非常勤職員の扱いをどうするのかといった点が明確にされておらず、国への移行に伴う人員削減とこれによる機能の大幅低下の懸念はいまだ払拭されていない。国民生活センターの移行先についても、これを「特別の機関」として消費者庁に移行するのが有力な考え方であるとしているが、具体的にどのように国民生活センターの機能の独立性を確保するのかは必ずしも明確ではない。また、国民生活センターの法人としての存続についての比較検討も不十分であったと言わざるを得ない。



しかも、国民生活センターの国への移行の在り方についての議論に重点が置かれた結果、消費者行政全体の充実強化についてはなお議論が不十分であると言わざるを得ない。例えば当連合会が主張している、消費者庁の所管の見直しに伴う権限・組織体制の拡充については何ら触れられていないし、消費者委員会の監視機能を強化するために主務大臣の干渉を抑制する等の具体的な制度上の方策についてもほとんど触れられていない。



当連合会は、国民生活センターの在り方については、国への移行の場合に人員・予算が大幅に削減されるのではないかという懸念が払拭され、同報告書が示した「機能の一体性と業務運営・人事面での独立性を確保すべき」との指針が今後の制度改革において確実に実現されるという観点から、法人として存続する場合よりも真に有効かをさらに見極めることが重要と考える。また、同報告書において検討が十分なされていない消費者行政全体の充実強化についても、さらに重ねて検討が深められることを求める。

  
 

2012年(平成24年)9月3日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司