死刑執行に強く抗議し、死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明

本日、東京、大阪の各拘置所において、それぞれ1名に対する死刑の執行が行われた。極めて遺憾な事態であり、死刑執行に強く抗議する。


当連合会は、本年6月18日、滝実法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を直ちに講じることを求める要請書」を提出して、国に対し、直ちに死刑の廃止について全社会的な議論を開始し、その議論の間、死刑の執行を停止することを改めて求めたところである。


死刑の廃止は国際的な趨勢であり、日本政府は、国連関係機関からも繰り返し、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう勧告を受けてきた。しかし、本年3月、小川敏夫法務大臣(当時)は、「死刑制度の在り方についての勉強会」を終了させたのに続き、同月29日には、1年8か月ぶりとなる死刑の執行を3名に対して行った。その後、政務三役による絞首刑の在り方に関する検討が開始されたと報道されたものの、その議論状況は一切公開されないままであり、本年6月4日に滝法務大臣が就任した後もその状況は変わっていない。その一方で滝法務大臣からは「一つ一つの案件をどう判断するか考えて、職責を果たす」との死刑執行に前向きな発言がなされていた。


しかし、死刑をめぐる議論と切り離して死刑執行がなされるべきではなく、ましてや死刑に関する議論を明らかにしないまま執行すべきではない。今こそ、死刑の執行を停止した上で、政府が中心となって、死刑に関する情報を広く国民に公開し、国会に死刑問題調査会を設置し、法務省に有識者会議を設置する等の方策をとることによって広く国民的な議論を行うべきである。


よって、当連合会は、死刑執行に対し強く抗議するとともに、死刑執行を停止し、死刑制度の廃止について全社会的議論を直ちに開始することを求めるものである。


2012年(平成24年)8月3日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司