「東電OL殺人事件」再審開始に関する会長談話

本日、東京高等裁判所第5刑事部は、「東電OL殺人事件」に関する再審請求事件(請求人:ゴビンダ・プラサド・マイナリ氏)について、本年6月7日に東京高等裁判所第4刑事部が行った再審開始決定を維持し、検察官の異議申立てを棄却した。



本件は、1997年(平成9年)3月8日の深夜、東京都渋谷区にあるアパートの一室において女性が殺害され、現金が強取されたという事件である。



原審は、再審請求後に新たに実施されたDNA型鑑定の結果を踏まえて、ゴビンダ氏以外の第三者が現場に入って被害者と性交し、その後、犯行に及んだ可能性があることを指摘した上で、新旧全証拠を総合評価した結果、ゴビンダ氏を犯人と断定するには合理的な疑いが残ると判断していた。



本日の決定は、上記のDNA型鑑定の結果に対する評価や新旧全証拠の総合評価に関する原審の判断を踏襲し、再審開始決定を支持した。これは健全な社会常識に合致した当然の判断といえるが、原審の決定からわずか2か月弱で下されたものであり、ゴビンダ氏の速やかな名誉回復及び被害救済を図ろうとしている点で評価できる。



他方、検察官は、原審において第三者による犯行の可能性を示すDNA型鑑定の結果が明らかになった後も、新たなDNA型鑑定の実施に固執するなど、根拠のない探索的な立証を行おうとしていた。このような検察官の態度は、「あたかも常に有罪そのものを目的とし、より重い処分の実現自体を成果とみなすかのごとき姿勢となってはならない。」と定める「検察の理念」にも反するものであって、極めて遺憾である。



当連合会は、既に本年6月7日付けの会長声明において、検察官に対し、再審開始決定に対し異議申立てを行わないよう求めるとともに、証拠リストの交付など全面的証拠開示制度の実現を喫緊の課題として全力で取り組む旨を表明したところである。本日の決定についても、これを尊重して特別抗告を断念するとともに、本件を速やかに再審公判に移行させるよう求める。



また、当連合会は、今後もゴビンダ氏が再審無罪判決を勝ち取るまで支援を続ける所存である。



2012年(平成24年)7月31日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司