裁判所法の一部を改正する法律案の成立に関する会長声明

本日、司法修習費用に関する裁判所法の一部を改正する法律案が、政府提案に対し、修正を加え、可決成立した。


本改正は、司法修習費用の貸与制を前提に経済的困窮者への返還猶予を認めるものであるが、国会審議において、


1 法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律の一部を改正して、学識経験を有する者等により構成される合議制の組織の意見等を踏まえつつ、1年以内に法曹養成制度について検討を加えて一定の結論を得た上、速やかに必要な措置を行う、


2 法曹養成制度の検討においては、司法修習生に対する適切な経済的支援を行う観点から、法曹の養成における司法修習生の修習の位置づけを踏まえつつ、検討が行われるべきである、


との重要な修正が付加された。


当連合会は、法曹三者統一修習制度の下で厳しい修習専念義務を課される司法修習生の身分保障として長年維持されてきた給費制の存続を一貫して主張してきたところであり、今国会で、法曹養成制度の全般的な検討の間、給費制を暫定的に存続させる内容の公明党修正案が衆議院法務委員会で否決されたことは、遺憾である。


しかし、上記修正部分で、今後行われる法曹養成制度の検討において「司法修習生に対する適切な経済的支援を行う観点」と「法曹の養成における司法修習生の修習の位置づけを踏まえ」ることが明記され、国会での質疑で将来の給費制復活も排除されていない旨の答弁がなされたことは、一定程度評価しうる。


また、法科大学院を中核とする法曹養成制度は、法科大学院入学者の急減、司法試験合格者の急増による司法修習終了者の「就職難」等、深刻な問題に直面しており、上記修正において法曹養成制度について合議制の組織で1年以内に検討を加えて一定の結論を得たうえ、速やかに必要な措置を行うとされたことは、時宜にかなったものである。


当連合会は、本年3月に「法曹人口政策に関する提言」を、本年7月に「法科大学院制度の改善に関する具体的提言」を各々公表し、司法試験合格者数をまず1500人に減員し法曹人口増加のペースを急増から漸増に転換すること、法曹養成教育の質を維持・向上させるために法科大学院の統廃合と学生定員・入学者総数の大幅な削減を促進すること等の法曹養成制度全般に関する改善策を取りまとめたところである。


当連合会は、今回の裁判所法改正案の修正に尽力された関係各位に敬意を表するとともに、新しい合議制の組織が速やかに検討を開始し、現在深刻な問題に直面している法曹養成制度の具体的な改善方策を取りまとめ、実施されるよう期待するものである。

 

2012年(平成24年)7月27日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司