株式会社東日本大震災事業者再生支援機構による第1号の支援決定に関する会長談話

本年5月16日、株式会社東日本大震災事業者再生支援機構(以下「震災支援機構」という。)は、第1号の支援決定を行ったことを発表した。それによると、津波により販売用の在庫が全て流失してしまい、販売収入のあてがなくなり、借入金の弁済が困難となっている福島県浜通り地方所在の農事組合法人への支援決定であるとのことである。さらに新聞報道によれば、債権全額を融資元の金融機関から買い取ることを決めたとされている。



震災支援機構は、その基本法となる株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法が昨年11月28日に公布されてから3か月に満たないうちに役員候補者等と態勢を固め、本年2月に設立され、本年3月5日から業務を開始している。非常に短い間に震災支援機構が立ち上がり、業務開始から2か月あまりでの第1号の支援決定であり、評価する。



震災支援機構が福島第一原子力発電所に近い福島県浜通り地方の農事組合法人を第1号の支援決定の対象としたことの意義は大きい。第1号の支援決定は、被災地域において事業の再生を図ろうとする小規模企業者、農林水産事業者、医療福祉事業者等に対し、希望を与えるものであって、震災支援機構の支援が、被災事業者の復興を後押しする有効なものであるとして、社会的に評価され、信頼を得る第一歩と評価できる。



なお、本年5月16日現在で、現に支援決定に向けて最終調整に入っている事業者が14件、関係金融機関や事業者等と具体的な支援の内容等の協議を行っている事業者が11件あるとのことである。東日本大震災によって過大な債務を負った事業者が、広く支援を受けられることが一層期待されており、今後債権買取りによる再生支援が更に飛躍的に増加することを期待している。また、すでに設立されている各県の産業復興機構及び産業復興相談センターとの協力関係がさらに構築され、迅速な被災事業者支援が震災支援機構、産業復興機構及び産業復興相談センターによって円滑に行われるよう、政府が一層注力することを望むものである。



当連合会は、今後とも被災事業者の再生と地域のコミュニティの再建を推進するため、再生支援機構、産業復興機構、産業復興相談センター、各種専門家団体、関係する政府機関や地方自治体と協力し、被災事業者の支援活動を継続していく決意である。

 

2012年(平成24年)5月25日

日本弁護士連合会
 会長 山岸 憲司