情報公開法改正法の今国会での成立を求める会長声明

昨年4月、情報公開法改正法案(行政機関の保有する情報の公開に関する法律等の一部を改正する法律案、以下「改正法案」という。)が国会に提出された。


改正法案は、現在の情報公開法の解釈運用上の問題や非開示処分取消請求訴訟手続上の問題を踏まえ、これらを改善すべく、不十分ながらも、知る権利の保障の明文化、不開示情報の範囲の限定、裁判所が行政機関に対し行政情報の提出を命じて裁判所のみが見分できる手続(インカメラ審理)の導入などを盛り込んだ内容となっている。さらに、「国民に分かりやすい形で、かつ、国民が利用しやすい方法により提供するものとする」旨の積極的な情報提供の規定も提案されている。


国政において様々な難問が蓄積している現在、国民が主権者として責任ある判断をするべく、情報公開法の改正は急務である。しかるに、法案の国会提出から1年経った現在でも、国会では全く審議されていない。国会のどの過程で審議がストップされているのかさえ分からない。


昨年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故では、東京電力が作成した原発敷地内の汚染地図は作られてから1か月以上も公表されず、SPEEDIの拡散予測が公表されたのは5月に入ってからだった点などで、原子力情報の公開についての政府の消極的な姿勢に対しては国内外から不満や不安、非難の声が高まった。また、政府の原子力災害対策本部が昨年末までに計23回開いた会議の議事録を全く作成しておらず、十分な情報提供施策も取られていなかったことが判明している。これは意図的な情報隠しととられても仕方がない。


当連合会は、2010年1月22日付けの要望書において、当時秘密保全法制について検討していた情報保全の在り方に関する有識者会議に対し、その検討に関わる会議の議事録の作成及び公開を求めたが、秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議でも議事録が作成されておらず、実際に配布された会議資料とは異なるものがホームページに掲載されるなど、情報公開を進めるための公文書管理もなされていないことも明らかとなった。知る権利の保障は形骸化しているといわざるを得ない。


国会は、主権者である国民の情報主権の確立が重要であり、今後の行政のあり方を議論するために情報公開制度の拡充が必要不可欠であることを認識し、早期に改正法案を可決すべきである。
 

2012年(平成24年)4月11日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児