改正労働者派遣法成立に当たって、引き続き、真に労働者保護に値する抜本的な改正を求める会長声明

労働者派遣法の改正法(以下、「改正法」という。)が2012年3月28日、参議院本会議で可決成立した。改正法は、政府が国会に提出をしていた法案に対して、与野党3党が大幅な修正をすることを合意し、政府案の眼目であった登録型派遣の原則禁止規定と製造業務への派遣の原則禁止規定を削除するとともに、禁止される日雇派遣の範囲を2か月以内から30日以内に縮小したものである。また、違法派遣に対する直接雇用申込みみなし制度の施行に3年の猶予期間を設けている。



当連合会は、2011年12月5日にも会長声明を公表し、与野党による修正が大きな後退であるとして、抜本的な見直しを求めたところである。すなわち、当連合会は、労働者派遣法の抜本的な改正に必要な8項目(派遣対象業務の限定、登録型派遣の禁止、日雇い派遣の全面禁止、直接雇用のみなし規定の創設、均等待遇の義務付け、マージン率の上限規制、グループ内派遣の原則禁止、派遣先特定行為の禁止)を指摘してきたものであり、これを実現するよう強く求めた。



改正法は、①法の目的に労働者保護をうたい、取締法規としての性質から労働者保護法への転換を図っていること、②日雇い派遣の一部禁止を導入したこと、③直接雇用のみなし制度を導入して、派遣先の責任を強化したこと、④マージン率の公表を義務付けたこと、⑤派遣労働者の待遇改善を派遣先、派遣元に努力義務として要請したことなどが盛り込まれたものの、なお抜本的な改正には程遠いものである。また、国会における審議も不十分であり、派遣労働者の実態に迫るものでなかった点も問題点として指摘せざるを得ない。



登録型派遣及び製造業務への派遣の禁止規定については、今回の法案から削除されたものの、法施行1年後に労働政策審議会で検討を開始することとされており、派遣労働者の実情に応じた抜本的な改正へ向けた議論を再開するよう強く求めるものである。



東日本大震災から1年が経ち、依然として被災地の雇用情勢は悪く、また、日本経済全体が回復へと向かってはいない。労働者全体の雇用の安定と労働条件の向上は日本の経済全体にとって極めて重要であり、労働者派遣法の抜本的な改正は依然として重要な課題である。今回の改正法は、規制強化へのわずかな第一歩にすぎない。


当連合会は、今後も引き続き、真に労働者保護に値する抜本的な改正を粘り強く求めていくものである。

 

2012年(平成24年)3月28日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児