より多くのパート労働者が厚生年金に加入できる制度への改正を求める会長声明

政府はパート労働者に対する厚生年金被保険者資格を拡大し、2016年度から従業員501人以上の企業で週20時間以上働く労働者(勤務期間が1年以上で、年収が94万円以上)を新たに加入対象とする関連法案を今国会に提出する方針である。この要件を満たすパート労働者は同時に企業の健康保険組合にも加入できる。



政府案で新たに厚生年金の被保険者資格を得るのは約45万人とされている。政府は昨年6月の社会保障・税一体改革成案においては、単に「週20時間以上働く」ことだけを条件としていた。これであれば、約400万人に大幅に拡大されるはずであった。しかし、その後、負担増を嫌う企業側からの反発を受け、企業規模や年収要件等の条件が厳格になり、対象者が大幅に減っていった経過がある。



パート労働者が厚生年金に加入できれば、保険料は労使折半となり、月収の低い労働者にとっては保険料負担が軽減され、老後に受給できる年金が増える。パート労働は、いわゆる「主婦パート」だけではなく、今やシングルマザーや若者など多くの非正規労働者に広がっている。雇用形態による不利益をできるだけ解消し、全ての労働者が安心して働くことができる環境整備が必要であり、そのためには厚生年金等の社会保険の適用対象を思い切って拡大する必要がある。当連合会も、パート労働者の厚生年金、健康保険、雇用保険の諸制度の被保険者資格を拡大するべきであると主張してきた(「パートタイム労働者の権利保障に関する決議」(1989年9月16日付け)等)。



今回の政府案は、半歩前進ではあるものの、企業規模等の要件が厳格にすぎて、適用対象者があまりにも少ない。



当連合会は、中小零細企業の負担増に対しても適切な配慮をしつつ、現政府案よりも大幅な適用対象拡大を今国会で実現するよう強く求めるものである。

 

2012年(平成24年)3月23日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児