憲法審査会の始動に当たっての会長声明

本年10月20日、衆議院及び参議院において各憲法審査会の委員が選任され、翌21日には第1回の会合が開催されて、会長、幹事が選出された。



当連合会は、憲法改正手続法について法案段階から数々の問題点を指摘してきたが、同法成立後も次のとおり、繰り返し問題点を指摘してきた。



(1)同法が成立した2007年5月14日、「憲法改正手続法成立についての会長声明」を発表し、「最低投票率の定めがないことをはじめ、本来自由な国民の議論がなされるべき国民投票運動に萎縮効果を与えるような多くの制約が課されること、資金の多寡により影響を受けないテレビ・ラジオ・新聞利用のルール作りが不十分であること」などの是正すべき問題点があること、参議院日本国憲法に関する調査特別委員会で18項目にもわたり検討や措置を求める附帯決議がなされており同法が十分な審議を経ていないことは明らかであることを指摘した上で、「憲法改正権者は国民であるという視点にたち、あらためて国民投票に真に国民の意思を反映することができるような法律にするべく同法の抜本的な見直しがなされること」を強く要請した。



(2)2009年11月18日の「憲法改正手続法の見直しを求める意見書」において、投票方法や運動規制をはじめ8項目にわたる同法の問題点をあらためて詳細に指摘し、重ねて同法の抜本的見直しを求めた。



(3)2010年4月14日の「憲法改正手続法の施行延期を求める会長声明」では、前記附帯決議において、特に成年年齢、最低投票率、テレビ・ラジオの有料広告規制の3点については「本法施行までに必要な検討を加えること」とされ、同法附則で、選挙権を有する者の年齢に関する公職選挙法、成年年齢に関する民法その他の法令、公務員の政治行為の制限に関する国家公務員法、地方公務員法その他の法令について「同法が施行されるまでに必要な法制上の措置を講ずるものとする」とされながら、「附則及び附帯決議が求めている検討がほとんどなされておらず、必要な法制上の措置が講じられていない現状では、同法の施行は延期されるべきである」と、同法の施行延期を求めた。



以上のような数々の問題点の指摘にもかかわらず、同法は2010年5月18日に完全施行されたが、以上の問題点の抜本的見直しがなされないままに委員が選任され、第1回の会合が開催されたことは誠に遺憾である。



衆議院及び参議院憲法審査会が始動した今日、憲法改正の審議の前にまずなすべきことは、こうした問題点についての抜本的見直しである。当連合会は、あらためて憲法改正手続法の抜本的見直しを強く求めるものである。

 



2011年(平成23年)10月27日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児