事業者の二重ローン解消のために早期に債権買取機関を設置することを求める会長声明

東日本大震災により居住建物、自動車及び事業用財産を失った市民、中小事業者が抱えるローンやリース代金等の既存債務からの解放等、いわゆる「二重ローン問題」が焦眉の急の課題となっている。個人の債務者については個人債務者に関する私的整理ガイドラインを策定すべく有識者による研究会が立ち上がり、準備が進行している。



他方、中小事業者については、債権買取機構をつくり、中小事業者の債務を減免する等の仕組みについて検討していた民主党、自由民主党、公明党の三党の実務者協議は本年7月8日時点で合意に至らず、自由民主党、公明党、たちあがれ日本、新党改革の四党は「株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法(案)」を参議院へ提出し、一方で政府・民主党は本年8月をめどに債権買取りの機構を設置すると報道されている。今後、同法案の成否は与野党間の協議に委ねられており、不透明な状況にある。



当連合会は、本年5月19日に「東日本大震災復興支援緊急措置法案骨子案<第一次案>」を取りまとめ、いわゆる「二重ローン問題」について、債権の買取機構の設置を含む法制化を求めてきた。さらに、仙台弁護士会を中心に既存債務の解消を求める緊急請願署名活動を行い、法律によって買取機関の設置を求めている。

各地の弁護士会の震災相談には二重ローンの解消を求める切実な相談が多く寄せられており、まさに被災された方々がマイナスからではなくゼロから再出発できるよう、一日も早い買取機構の設置が待たれている。



当連合会は、国及び国会が被災地、被災者の切実な声に耳を傾け、政党間の意見の相違を乗り越えて早期合意を図り、救済の対象範囲を広げ、新規の融資が柔軟に行われる等の実効性のある買取機構を、立法により一日も早く設置することを求める。



2011年(平成23年)7月13日

                      日本弁護士連合会
                       会長 宇都宮 健児