相続放棄等の熟慮期間に係る民法の特例法についての会長談話

本日、「東日本大震災に伴う相続の承認又は放棄をすべき期間に係る民法の特例に関する法律」が成立し、本年6月21日に公布、施行されることになった。この法律によって、相続の承認又は放棄をする期間が「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」とされていたものが、東日本大震災の被災者については、平成23年11月30日まで延長されることとなった。


当連合会は、被災地内外の法律相談を実施し、相続人らが相続の承認や放棄等の判断を行える状況になく、また、手続上必要な必要書類の収集も困難な状況にあったことから、本年5月26日付け「相続放棄等の熟慮期間の伸長に関する意見書」において、熟慮期間の延長を求めていたところである。したがって、今回、議員立法によって速やかに上記措置がとられたことを高く評価したい。


今回の特例法の対象は被災者に限られている。もともと熟慮期間及びこの伸長に関する手続は、広く国民に周知されているとは言い難い状況にある。そこで、第1に、震災発生時に被災地以外に住所を有していた相続人に対し、政府及び当連合会を含む法曹関係者は、本特例法で保護される範囲を正確かつ迅速に周知するよう努めるべきである。第2に、裁判所は、相続人に不利益が生じないよう、被災地の実情に配慮した弾力的な運用を積極的に行うべきである。




2011年(平成23年)6月17日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児