東日本大震災から3か月目の課題に関する会長声明

東日本大震災から今日で3か月目を迎える。被災地では今なお8千人を超える行方不明者の捜索が続けられ、瓦礫の処理さえ終わっていない。いまだに9万人を超える被災者が、劣悪な環境に耐えながら応急仮設住宅の建設を待っており、疲労は限界をはるかに超えている。東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故は国内外に多大かつ深刻な影響を与えているにもかかわらず、いまだ収束の目途さえ立っていない。周辺住民の恐怖は想像を絶するものがあり、県外への避難を余儀なくされた多数の被災者は、極度の不安を抱えながら日々を過ごしている。3か月が経過したにもかかわらず、こうした惨状が続いていることに深く心が痛む。社会正義の実現を使命とする弁護士としては、今こそ、被災地の基本的人権を回復する「人間復興」を目指して全力で取り組まなければならない。


当連合会は、震災当日、直ちに東日本大震災・原子力発電所事故等対策本部を立ち上げ、様々な被災者支援活動を展開してきた。例を挙げると、第1に全国の弁護士による被災地での法律相談活動、第2に被災者及び県外避難者等に対するきめ細やかな支援活動、第3に被災地の様々な方面に対する情報提供活動、第4に被災地のニーズから浮かび上がった諸問題を克服するための立法提言活動である。


こうした活動によって、これまでに得られた成果がある。第1は、1万7千件を超える法律相談件数が示すとおり、被災者への直接の支えとなり、復興への希望を届けることができたことである。第2に、相談活動及び情報提供活動により、低下した行政機能を補うことができたことである。第3に、立法提言活動によって、被災者を救済する制度の創設につながったことである。ことに、極めて困難とされてきた、不合理な債務からの解放(いわゆる二重ローン問題)、相続放棄等の熟慮期間の伸長について立法の目途がつきつつあることは特筆すべき成果である。さらに、災害援護資金の無保証化、被災者生活再建支援法の弾力化指針等についても、大きな前進であると評価できる。


とはいえ冒頭に述べたとおり、3か月が経過したにもかかわらず、課題は山積みである。まず第1に、人間復興の理念を明示した復興基本法を速やかに成立させなければならない。第2に、被災者の生活を一刻も早く物心ともに安定させるとともに、被災地自治体と住民が主導して復興のビジョンを打ち立てなければならない。第3に、原子力発電所事故につき住民等に対する原状回復を基本とする十分かつ迅速な被害補償をし、段階的な原子力発電所の停止・廃止を行うとともに、エネルギー政策の転換を図らなければならない。多数に及ぶことが避けられない損害賠償案件は、相対交渉と裁判所だけで迅速に解決を図ることは困難である。国会は必要な立法措置を講じ、内閣はこれを強力に実行するべきである。


現状のように先行きが見えないと被災者の不安は募るばかりである。当連合会は、これらの課題に早急に目途をつけ、被災者の不安を取り除き、被災地の復興が力強く進んでいくことを願ってやまない。


2011年(平成23年)6月11日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児