捜査手法、取調べの高度化を図るための研究会中間報告に関する会長談話

本日、国家公安委員会委員長が主催する「捜査手法、取調べの高度化を図るための研究会における検討に関する中間報告」が発表された。この研究会は、治安水準を落とすことなく取調べの可視化(取調べの全過程の録画)を実現するために、発足したとされている。すなわち、捜査構造全体の中での取調べの機能をどうするか、どのように可視化・高度化を図るか、取調べ以外の捜査手法をどのように高度化するか等について幅広い観点から検討を行うことを目的として、2010年2月に発足したものである。

 

この研究会は、これまですでに13回の会議を開催し、えん罪の被害者、犯罪被害者の御遺族、心理学の専門家、現に取調べに従事している警察官、そして外国の専門家のヒアリングを行った。また、諸外国の刑事法制についての調査結果の報告を受けるなど、基礎的な資料を集積し、意見交換を進めてきている。

 

ところで、本年3月31日に発表された「検察の在り方検討会議」(以下「検討会議」という。)の提言では、被疑者取調べの可視化について、「取調べの可視化を含む新たな刑事司法制度を構築するため、新たな検討の場を設け、本格的な検討を開始して、改革を実現することを強く求めたい」旨を述べている。検討会議ではこの研究会への直接の言及はなかったが、この研究会は、検討会議が述べるような視点をも持ちながら、1年以上にわたって検討を進めてきているといえる。法務省において新たな検討の場を設けるとしても、全くのゼロから検討するのではなく、この研究会における調査結果をもよく参照すべきであろう。

 

検討会議では、取調べの全過程についての録画・録音を目指すべきであるとの意見について、多くの委員の支持を得ている。これをも勘案しつつ、国家公安委員会委員長の研究会においても、早急に、取調べの可視化の制度化に向けての検討が進められなければならない。当連合会は、そのために弛みなく精力を傾けていく所存である。


2011年(平成23年)4月7日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児