愛媛県における業務妨害事件に関する会長声明

本年3月2日午前9時15分頃、当連合会会員の愛媛弁護士会所属の藤山薫弁護士の事務所において、出勤してきた法律事務所所員が同事務所を訪れた男性から「弁護士の居所を教えろ」と脅迫され、顔を殴られ、ナイフを突きつけられるという事件が発生し、この男性が暴力行為等処罰法違反の疑いで現行犯逮捕されるという事件が発生した。


報道によれば、逮捕された男性は「過去に民事訴訟の相手側の担当だった弁護士に恨みがあった。殺すつもりだった」と供述しているという。報道だけでは犯行動機など詳細は不明であり、今後の捜査の進展を待つことになるが、弁護士業務に関連した行為である疑いが強い。


昨年6月には横浜弁護士会所属の弁護士が、同11月には秋田弁護士会所属の弁護士が、いずれも担当していた事件の相手方によって殺害されるという悲劇が連続して発生している。さらには、本年2月23日にも横浜弁護士会会員が担当する離婚事件の相手方が、同会員の所属事務所のドアを蹴って壊すという事件が発生した。そして、今回も業務に関連して弁護士の生命が危険にさらされた事件である可能性が高い。


ところで、昨年6月の横浜弁護士会所属弁護士殺害事件についての本年2月28日横浜地方裁判所判決は、「本件犯行は、法治国家の根幹を揺るがす極めて悪質なもの」と断じている。


当連合会は、当事者を代理して行う弁護士の活動を憎しみの対象とする行為が続発していることを深く憂慮するとともに、暴力的な手段による弁護士への業務妨害行為は司法制度の根幹を揺るがすものであると考える。


当連合会は、犯罪防止と犯罪者処遇に関する第8回国際連合会議(1990年)で採択された、弁護士の役割に関する基本原則において「弁護士は、その職務遂行を理由として、その依頼者又は受任事件と一体と見なされてはならない」とされていることを改めて想起するとともに、業務妨害行為に対して決して怯むことなく、弁護士の使命を貫徹していく決意である。


2011年(平成23年)3月4日


日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児