検察官による捜査報告書の改変指示に関する日弁連コメント

2010年(平成22年)12月24日
日本弁護士連合会


大阪地方検察庁は、本年12月21日、検事の懲戒処分を発表した。報道によると、懲戒処分の対象となった検事は、警察官が作成した捜査報告書につき、知的障害のある被疑者のアリバイに関する記載が「余分な争点になる」として、警察官に対し削除を命じたとされている。捜査報告書が改変されたことによって、弁護活動が妨害されたという結果が生じている。


検察官が、強引な取調べにより予め描いたストーリーに沿った内容の供述調書を作成したり、無罪を示す証拠品を改ざんしたり、証拠開示の対象となる取調べメモを廃棄したりするなどの検察捜査の実態が、近時、次々と明らかになっている。今回の捜査報告書改変事件は、このような違法・不当な検察捜査が、一部の検察官ないし事件に限られたものではないことを物語っている。これらの事件に共通するのは、証拠に基づいて犯罪の成否を判断するのではなく、予め描いたストーリーに沿って証拠を作成し、これに反する証拠は改変し、弁護人への証拠開示を回避してまで、被疑者・被告人を有罪に陥れようとする検察官の姿勢である。


検察官は、市民の自由を奪いその人生を左右するほどの強大な権限を有している。検察権の不適正な行使により市民の自由が不当に奪われることを防止するためには、相手方当事者である弁護人及び裁判所が、検察権の行使を実効的にチェックできる仕組みが必要不可欠である。


当連合会は、市民の自由を守るための仕組みとして、取調べの全過程の録画の義務化、並びに、検察官手持ち証拠のリスト交付及び原則全面開示の一刻も早い実現を、重ねて求めるものである。


以上