武富士の会社更生手続開始決定に対する会長声明

本年9月28日、消費者金融大手の株式会社武富士が、東京地方裁判所に会社更生手続開始の申立てをし、10月31日、同裁判所により会社更生手続開始決定がなされた。


10月初めに開催された債権者説明会における説明によれば、把握できている限りでも、過払債権者数は約11万3000人、過払金債権額は約1713億円にのぼるとされていた。さらに報道等によれば、過払金が発生していることを知らない潜在的な債権者を含めると、債権者の数は200万人を超えるともいわれている。この度の同社の破綻を受け、これまで各地の弁護士会等において、緊急の相談会を実施したところ、極めて多くの相談が寄せられており、その大半が一般消費者であることに鑑みれば、本更生手続における同社の利用者保護の必要性は極めて高い。特に、債権者の多くは会社更生手続についての情報が圧倒的に不足している状況にある。


そのため、当連合会は、裁判所、更生管財人及び調査委員等、本更生手続関係者に対し、本更生手続の進行にあたって、①今後、利息制限法により引き直し計算した金額を超えて利用者に請求しないことはもちろんのこと、自ら利息制限法の上限利率による引き直し計算を実施し、過払金が発生している利用者については、適切な方法により通知し、更生債権の届出を促すなどして、一般消費者である過払債権者等が本更生手続に参加するための手続保障を確保するために万全の処置をとること、②同社と過去に取引を終了した利用者の取引についても、同様に会社更生手続に参加する機会の確保に万全を期すること、③会社更生法その他法令上認められたあらゆる権限を行使し、役員の損害賠償責任の有無等についても徹底的な調査を行ったうえで、その結果について、債権者等関係者に対して、広く情報開示すること等を強く要請する。


また、当連合会は、政府や地方自治体に対して、同社の破綻に伴う同社の利用者の混乱を防止し、さらに困難な経済的状況に陥ることのないよう、同社の利用者のための相談体制や本更生手続の周知などの取組の強化を求めるとともに、当連合会としても、全国の弁護士会における相談体制を強化するなどして、同社の利用者の権利保護に最大限努力する所存である。


2010年(平成22年)11月1日


日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児